狩谷棭斎

狩谷 棭斎（かりや えきさい、安永4年12月1日（1775年12月23日） - 天保6年閏7月4日（1835年8月27日）は、江戸時代後期の考証学者である。名は初め高橋真末、後に改名して望之（もちゆき）、字は卿雲、通称は津軽屋三右衛門（11代目）、別号を求古楼。戒名は常関院実事求是居士。

来歴

江戸の下谷池之端仲町に生まれる。父は書籍商・高橋高敏。25歳で従祖弟・狩谷保古の養子となる。津軽藩御用達という富裕な町人身分にして、幼少時から学問を好み、1794年ころから屋代弘賢に師事して和漢の学を授けられた。

墓は江戸下谷の天竜寺にあったが、巣鴨の法福寺に遷されている。

事績

棭斎は青年期の頃より古代日本文化の考証につとめ、考古遺品の収蔵と並行して金石文・古銭の研究を行っていたが、やがて漢籍善本の蒐集と校閲にすすみ、書誌学の方面にて非凡な見識を示した。たとえば「説文」について、もっとも親交のあった松崎慊堂と山梨稲川らと共同で討究した。「度量衡」については、1790年以来、西遊（近畿方面への旅行）を10回近く行ったほか、1832年には正倉院御物の諸尺拝観を実施するなど、いわゆる実証主義に徹した。「和名抄」についても松崎慊堂と研究会を重ね、比較考証に精細を極め、町人の学者として北静盧（屋根屋三右衛門）・市野迷庵（市野屋三右衛門）とあわせて「三三右衛門」と称される。晩年は浅草の住居を「実事求是書屋」と称した。

晩年の森鷗外が、史伝（『澀江抽齋』、『伊澤蘭軒』、『北條霞亭』の続編）の著述を意図し、資料を集めたが公務と病で果たせなかった。

家族

二女の俊（たか、とし）は、伊沢蘭軒の二男で幕府の奥医師となった柏軒（1810-1863、盤安）に嫁いだ。才女として知られ、「今少納言」と呼ばれた。

関連人物

• 渋江抽斎
• 伊沢蘭軒
• 北条霞亭
• 森立之
• 菅茶山

著作

• 『本朝度量権衡攷』　
• 『倭名類聚抄箋注』
• 『日本霊異記攷証』
• 『扶桑略記校證』
• 『古京遺文』
• 『上宮聖徳法皇帝説証註』
• 『京游筆記』
• 『日本現在書目證注稿』

刊行文献

• 『狩谷棭斎全集』「日本古典全集」全9冊、1927－28年、同刊行会。正宗敦夫・神田喜一郎ほか校訂

覆刻（6冊刊）、現代思潮社、1978年、オンデマンド版・現代思潮新社、2008年

• 『本朝度量権衡攷』冨谷至校注、平凡社東洋文庫（全2巻）、1991-92年、オンデマンド版2008年
• 『古京遺文』山田孝雄・香取秀真編、勉誠社、1976年

脚注

注釈

出典

参考文献

• 川瀬一馬『活版経籍考解説並補訂』日本書誌学会〈狩谷棭斎自筆本覆製附載〉、1933年。https://dl.ndl.go.jp/pid/1187865/1/24。 
• 梅谷文夫『狩谷棭斎』吉川弘文館〈人物叢書〉、1994年。ISBN 4642051988。 
• 森銑三『偉人暦・上』中央公論社〈中公文庫〉、1996年。ISBN 9784122027657。 
• 梅谷文夫『狩谷棭斎年譜（上）』青裳堂書店〈日本書誌学大系92(1)〉、2004年。 
• 梅谷文夫『狩谷棭斎年譜（下）』青裳堂書店〈日本書誌学大系92(2)〉、2006年。 
• 早稲田大学會津八一記念博物館 編『狩谷棭斎：学業とその人：狩谷棭斎墓碑受贈記念』早稲田大学會津八一記念博物館、2017年。 

関連文献

• 渡辺守邦・島原泰雄編『蔵書印提要』青裳堂書店〈日本書誌学大系44〉、1985年
• 井上宗雄ほか編『日本古典籍書誌学辞典』岩波書店、1999年。ISBN 4000800922
• 国立国会図書館編『人と蔵書と蔵書印：国立国会図書館所蔵本から』雄松堂出版、2002年。ISBN 4841903070
• 五島美術館大東急記念文庫編『狩谷棭斎と経籍訪古志：大東急記念文庫所蔵の漢籍から』五島美術館大東急記念文庫、2019年

外部リンク

• “狩谷棭斎 蔵書印の世界”. 国立国会図書館. 2021年5月2日閲覧。
• 狩谷望之 - 国文学研究資料館蔵書印データベース 2021年5月1日閲覧。

1. 和名類聚抄
2. 1775年
3. 尺
4. 日本三代実録
5. 歴史考古学
6. 日本国見在書目録
7. 国学
8. 匁銭
9. 川瀬一馬
10. 伊沢蘭軒
11. 小野蘭山
12. 従四位
13. 京枡
14. 書誌学
15. 大和物語
16. 名物学
17. 松崎慊堂
18. 養鸕徹定
19. 団子
20. 渋江抽斎