![電磁場テンソル 電磁場テンソル](/modules/owlapps_apps/img/nopic.jpg)
電磁場テンソル(でんじばテンソル)とは、電磁場を相対性理論に基づいた4次元時空の形式で記述した2階の反対称テンソル場である。以後、相対論と言えば、特に断りがなければ特殊相対性理論を指す。
電磁場の強度(field strength)F は二階のテンソル
と定義される。 ここで A は相対論的な4元ベクトルの電磁ポテンシャル
である。 また、微分も相対論的な4元ベクトル
である。
定義から電磁場テンソルは明らかに反対称テンソルである。従って独立成分は6つある。 これは3次元空間のベクトル場である電場の強度 E と磁束密度 B の各成分に対応する。 電場の強度と磁束密度は3次元空間の電磁ポテンシャルによって
と表される。 あるいは各成分毎に
と書くことが出来る。 具体的には
である。上付きの は
となる。それぞれ行列の形で表せば
となる。
完全反対称テンソル ε を用いれば、電磁場の強度 F に双対なテンソル
が定義される。 具体的には
であり、行列の形で表せば
となる。
媒質中での電磁場を表す電束密度 D と磁場の強度 H は、電磁場の強度と同様に二階のテンソル G によって相対論的な形式で記述される。 それぞれの成分は具体的には
である。このテンソル G はサブ電磁テンソルとも呼ばれる。 サブ電磁テンソル G は電磁場の強度 F と
で関係付けられる。ここで P は分極テンソルであり、その成分は誘電分極 P と磁化 M である。 具体的には
である。 サブ電磁テンソル G と分極テンソル P をそれぞれ行列の形で表せば
である。
球面座標系 (ct, r, θ, φ) による4元ポテンシャルの成分表示は
であり、電磁場強度 F として
が得られる。 平坦な時空のミンコフスキー計量とその逆行列は球座標において
であり、電磁場強度の添え字を上げると
となる。
例えば、原点に点電荷 q が存在するときの電磁場テンソルは
で表される。
電磁場テンソルによって、相対論的な形でマクスウェルの方程式を記述することができる。 定義からビアンキ恒等式
が成り立つ。 双対テンソルを用いれば
と表すことも出来る。 この式は添え字 ν = 0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ
と対応する。
自由空間における電磁場の運動方程式は
と表される。 ここで j は4元電流密度である。 この式は添え字 ν = 0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ
と対応する。
媒質中の運動方程式は
と表される。 成分ごとにそれぞれ
である。
電磁場テンソルは荷電粒子に作用するローレンツ力を相対論的に記述する際に現れる。 相対論的な粒子の位置を X = (ct, r) で表すとき、電荷 q を帯びた荷電粒子に作用するローレンツ力は
となる。 ここで p は粒子の4元運動量である。ドットは運動のパラメータによる微分である。
時空の曲率、すなわち重力場がある場合に、偏微分はテンソルとはならず、レヴィ・チヴィタ接続を導入して共変微分への置き換えが必要となる。しかし、電磁場強度 F は偏微分による定義を変更することなくテンソルである。反対称性により共変微分の接続が相殺されるため
となる。ビアンキ恒等式は定義から成り立つので変更を要しないが、運動方程式は
であり、共変微分への置き換えが必要となる。
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