![キングコングの逆襲 キングコングの逆襲](/modules/owlapps_apps/img/nopic.jpg)
『キングコングの逆襲』(キングコングのぎゃくしゅう、King Kong Escapes)は、1967年(昭和42年)7月22日に公開された日本の特撮映画。製作は東宝。配給は日本では東宝、アメリカではユニバーサル・ピクチャーズがそれぞれ担当した。カラー、シネマスコープ(東宝スコープ)。
東宝の創立35周年記念作品としてランキン・バス・プロダクションとの提携により制作された。
悪の科学者ドクター・フーの陰謀に、正義の怪獣キングコングが立ち向かう。ロボット版キングコングのメカニコングに加え、1933年版『キング・コング』(以下、原典)へのオマージュとしてゴロザウルスと大ウミヘビも登場するほか、モンド島でのキングコングとゴロザウルスの対決シーンも原典へのオマージュとなっている。
東宝製作によるキングコング作品としては、『キングコング対ゴジラ』に続く2作目であるが、前作とのつながりはない。本作品のキングコングは、ヒロインのスーザンに従順な性格と設定されているなど、テレビアニメ版と同様の正義の怪獣として描かれている。身長は『キングコング対ゴジラ』に比べて半分ほどの20メートルと設定されており、着ぐるみの顔もより原典に近い造形となっている。また、メカニコングもアメリカ側がデザインを用意したキャラクターである。
円谷英二は原典へのオマージュとして大ウミヘビを登場させたり、髑髏島でのキングコングとティラノサウルスの戦いをモンド島においてのゴロザウルスとの戦いとしたりするなど、リメイクを行っている。原典のティラノサウルスは前足が3本指だが、本作品でもそれに倣ってゴロザウルスは3本指となったため、設定もアロサウルスの一種とする徹底ぶりだった。
円熟した特撮技術による高水準の作品として評価されているが、興行的には成功せず、若年層には同時上映の『長篇怪獣映画ウルトラマン』の方が好評であったとされる。
国際手配中である悪の天才科学者ドクター・フーは、某国の女工作員マダム・ピラニアの要請で、国連の科学者委員ネルソンと野村のアイディアを剽窃したロボット怪獣メカニコングを建造する。これを使い、北極の地下に眠る究極の核兵器素材である高エネルギー鉱石「エレメントX」の採掘を目論むが、エレメントXから発せられる磁気のため、メカニコングは作動不良に陥る。
同じころ、国連の原子力潜水艦エクスプロアー号は、海底油田調査のために南海の孤島モンド島近海を航行中、岩崩れに見舞われ、故障する。修理のために寄港したモンド島で、司令官のネルソンたちは伝説の巨獣キングコングと遭遇する。キングコングは乗員のスーザンに強い興味を持ち、その言葉を聞き分ける。
これを知ったマダム・ピラニアは、ドクター・フーに本物のキングコングを使っての採掘を提案する。北極地下に捕らえたキングコングを働かせるべく催眠術がかけられるが、すぐに解けてしまう。ドクター・フーはネルソン、野村、スーザンの3人を北極基地に連行し、キングコングに採掘を命じるよう脅迫する。
ついにキングコングは怒りを爆発させ、基地から逃走する。ドクター・フーは東京に上陸したコングを追い、東京湾に停泊した船からメカニコング2号を出動させる。この事態に、計画の露見を恐れて当初の目的からも逸脱していると考えたマダム・ピラニアはドクター・フーを見限り、ネルソンたちを船から逃走させる。スーザンは何とかキングコングに追いついて鎮めようとするが、そこへ出現したメカニコングが彼女をさらってしまう。キングコングとメカニコングの激闘は東京タワーへ移り、都下を見下ろす大決戦が始まった。やがて、マダム・ピラニアはメカニコングの制御装置を破壊しようとしてドクター・フーに射殺され、キングコングはスーザンを救出してメカニコングを東京タワーから突き落としてバラバラにさせる。
翌朝、キングコングは逃亡しようとするドクター・フーやその部下たちを湾上の船ごと沈めると、スーザンの呼びかけを背に故郷の島へ泳ぎ去っていくのだった。
ネルソン司令官と野村三佐が伝説の巨獣キングコングの能力を検証し、人工的に再現した国連のロボットの設計図を基にドクター・フーが作り上げた、金属色に輝くゴリラ型の巨大ロボット。建造のためのスポンサーは某国の工作員マダム・ピラニアの母国であり、本来の用途はこの某国が入手したがっている高エネルギー鉱石「エレメントX」の掘削であるため、戦闘用ではない。採掘時には、胴回りにナパームを主原料とする削岩用のナパーム・ボンベを20個装着する。設定では両目に殺人光線を装備している。
1号機はエレメントXの鉱脈が帯びる強力な放射線の影響から、作動不能に陥る。次に建造された2号機の初仕事は、逃走したキングコングの追跡となる。東京へ輸送され、増上寺で始まったキングコングとの激戦は、東京タワーにまでおよぶ。2号機の頭部にはキングコング用の催眠光線投射機が装着され、東京タワーでのキングコング捕獲作戦に使用される。キングコングを催眠状態にすることに成功するものの、野村のライフルによって催眠光線投射機が破壊され、催眠状態から覚めたキングコングによって投射機は叩き飛ばされてしまう。その後は東京タワーに登り、人質をつかみながらキングコングと戦うなど高い機動性を示したが、東京タワー頂上付近の高圧線に触れてバランスを崩し、落下して地面に激突した衝撃で全壊して爆発する。
モンド島近海に棲息する大きなウミヘビ。海底洞窟に棲んでいるとされる。牙には毒を持つ。
ネルソン一行がホバークラフトでモンド島からエクスプロアー号へ戻る際に突如現れ、襲いかかる。追ってきたキングコングに石を投げつけられたため、今度はコングを攻撃して強烈な巻きつきで苦しめるが、コングの怪力には敵わずに絶命する。
参照
『キングコング対ゴジラ』製作時に東宝が得たキングコングの使用権は5年間有効であったため、契約終了前にもう1本製作すべく企画された。前年に『ロビンソン・クルーソー作戦 キングコング対エビラ』として企画されたが、アメリカ側が脚本に難色を示したため、ドクター・フーやメカニコングの登場など、同時期に製作されていたテレビアニメ版と設定を通わせた展開に変更された。このテレビアニメ版を制作していたビデオクラフト・インターナショナル代表のアーサー・ランキン・Jrが、本作品にはテクニカル・アドバイザーとして参加している。
絶叫女優役は、アメリカ側が連れて来たリンダ・ミラーが務めた。当時のミラーはモデルなどの活動中であり、演技の経験はなかったが、雑誌『女性セブン』でのグラビアがランキン・Jrの目に止まり、起用された。
当初、マダム・ピラニア役には若林映子が予定されていたが、東宝との契約を更新せずフリーとなったことから、浜美枝が代役を務めた。
本作品の登場怪獣は身長20メートル程度と設定されているため、身長50メートルのゴジラが登場するゴジラシリーズでは1/25スケールでミニチュアが制作されていたのに対し、本作品では1/15スケールとなっており、大きく緻密なミニチュアが用いられているのが特徴である。
本作品に使用された東京タワーのミニチュアセットは「2体の着ぐるみ怪獣がよじ登って格闘する」という前提で設計されており、破損や転落事故を防ぐため、「釘打ちによる木製」ではなく「溶接組み立てによる鉄骨製」という頑丈かつ大掛かりで贅沢なものとなっている。ただし、一部の壊される部分には柔らかい素材が使用された。製作は、『モスラ』でも東京タワーを手掛けた戸井田製作所による。
本作品の一部に『キングコング対ゴジラ』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』の映像が使われている。
東宝特撮映画にたびたび登場する61式戦車のミニチュアだが、本作品で初めてエンジン内蔵のラジコン自走型となった。それまでのミニチュアは、自走はできても方向転換はできず、直接ピアノ線で引いて向きを変えながら撮影が行われた。
本作品の合成は、通常のフィルムとマスク合成用のフィルムに、三色分解したRGB(赤・緑・青)それぞれのモノトーンフィルムを加えた5本のフィルムを用いている。この方式は手間がかかって効率が悪いことから本作品限りであったが、合成を担当した川北紘一は、クオリティは素晴らしいと自負している。
いくつかの差異はあるものの、『キングコング対ゴジラ』ほどの改変は見られない。
「北極で三つ巴の戦いを繰りひろげるキングコング、メカニコング、ゴロザウルス」というスチル写真があるが、このシーンは劇中に存在しない。
予告編にはネルソンが記者からの質問に対し、「ニューヨークへ連れて帰って、また壊されたらどうするの」と答えるシーンがあるが、公開された完成版ではこの台詞が「ニューヨークへ連れて来ても、たぶん、もてあましますよ」に変更されている。
音楽は『キングコング対ゴジラ』と同じく伊福部昭が手掛けたが、ゴジラシリーズなど伊福部による他の怪獣映画では各怪獣のモチーフが継続して用いられているものが多いのに対し、本作品では同作品でのキングコングのテーマは用いられていない。2018年3月にサントラのCDがリリースされた。
「怪獣にそっくりなロボット怪獣で対抗する」というアイディアは水木しげるの漫画『怪獣ラバン』(1958年)や『ゲゲゲの鬼太郎』(大海獣)などのエピソードが先であり、水木も自身が1950年代に最初に作った旨を述べている。
1973年(昭和49年)12月20日には「東宝チャンピオンまつり」で再上映された。上映時間は59分となっている。主に、以下の変更がなされている。ラストには、『ゴジラ対メカゴジラ』の宣伝がなされている。
1983年(昭和58年)には、20歳前後の世代を中心に数年前より起きていたゴジラのリバイバルブームに応じて全国主要都市で行われた特集上映「復活フェスティバル ゴジラ1983」の1本としてゴジラシリーズの人気作とともにセレクトされ、オリジナル公開版がニュープリント上映された。
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