![サウロルニトレステス サウロルニトレステス](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4b/Saurornitholestes.jpg/400px-Saurornitholestes.jpg)
サウロルニトレステス Saurornitholestes ("トカゲ鳥泥棒"の意)は、北アメリカ大陸、アルバータ州、ニューメキシコ州、モンタナ州の白亜紀後期の地層から発見されているドロマエオサウルス類に属する恐竜の属の1つである。2種が知られており、1978年にサウロルニトレステス・ラングストニ Saurornitholestes langstoni 、2015年にサウロルニトレステス・スリヴァニ Saurornitholestes sullivani が記載された。サウロルニトレステスは小型で敏捷な肉食動物で、足には鎌のような鉤爪が備わっていた。
他のドロマエオサウルス類のようにサウロルニトレステスは、長く湾曲した刃物のような鉤爪を後肢第2指に備えていた。サウロルニトレステスは脚が長く、ヴェロキラプトルやドロマエオサウルスのような他のドロマエオサウルス類よりも軽いつくりをしていた。顎の前方に並ぶ牙状の歯はヴェロキラプトルのものよりも相対的に大きい。サウロルニトレステスはヴェロキラプトルに最も近縁とされるが、ドロマエオサウルス類内での精密な位置づけはわかっていない。
サウロルニトレステスは全長約1.8m で体重が推定10kg と見積もられている。腰の高さは0.6mと全長の半分以下である(尾が長いため)。
サウロルニトレステス・スリヴァニ Saurornitholestes sullivani は、頭骨に保存された大きな嗅球(脳の一部)の痕跡から、優れた嗅覚の持ち主だったと思われている。
1974年、カナダのアマチュア古生物学者、アイリーン・ヴァンダローはアルバータ州スティーブビル近郊で小さな獣脚類の頭を見つけた。彼女はアルバータ州立博物館のジョン・ストーラーにそれを報告し、ストーラーはハンスダイエッター・スーズへ送った。1978年、スーズは模式種サウロルニトレステス・ラングストニ Saurornitholestes langstoni を記載した。属名はサウロルニトイデス科(現在ではトロオドン科の下位分類群)に属すると考えられた為、サウロルニトイデス Saurornithoides (トカゲ鳥)に古代ギリシャ語で「泥棒」を意味する lestes を組み合わせたものになっている。種小名はワン・ラングストン・ジュニアへの献名である。
ホロタイプ標本 RTMP 74.10.5 はダイナソーパーク累層から見つかった。カンパニアンの時代である。それは非常に華奢な骨格で成る。それには歯、頭骨要素、2つの脊椎骨、肋骨、尾椎要素、前肢末端が含まれる。また3つのパラタイプも知られている。CMN 12343、CMN 12354、そして UA 5283。これらは全て前頭骨である。
今日、2つのより完全で大きい頭頂骨 (RTMP 88.121.39 と MOR 660、12点の骨要素と歯で構成)がアルバータ州の州立恐竜公園のバッドランドから知られるようになっている。それらのほとんどがドラムヘラーのロイヤル・ティレル古生物学博物館に収蔵されている。アルバータとモンタナの化石はどちらも単一の種、つまり Saurornitholestes langstoni の属性に当てはまると考えられている。しかしそれぞれ所属している地層の地質年代に大きな隔たりがある。具体的にはアルバータのオールドマン累層が約7700万年前 で、モンタナのツーメディスン累層上部は約7200万年前なので、500万年も時代的な差がある。似たような歯はアラスカ州の、より新しい(6900万~7000万年前)プリンスクリーク累層からも見つかっている。しかし現在のところ、それらが S. langstoni であるのかそうでないのかは不明である。新生児サイズのサウロルニトレステスの化石も報告されている。
サウロルニトレステス・スリヴァニ Saurornitholestes sullivani はニューメキシコのカートランド累層のハンターウォッシュ生物相から知られている。SMP VP-1270という前頭骨に基づいた記載である。本種はその前頭骨に模式種との違いがある。
2006年、ロバート・サリヴァンは第2の種としてサウロルニトレステス・ロブストゥス Saurornitholestes robustus をホロタイプ SMP VP-1955 に基づいて記載した。これは左前頭骨である。大きく太いその骨に因んで種小名が与えられ(robustus は「太い」を意味する)、それこそが S. langstoni との唯一の差異であるとされた。そのホロタイプはカートランド累層のウィローウォッシュ生物相から見つかっている が、後の研究でサウロルニトレステス・ロブストゥスはドロマエオサウルス類と見なすだけの特徴に欠くとされ、詳細不明の獣脚類と改められた。そして2014年の論文で、トロオドン族との類似性から属不明のトロオドン科に所属替えとなった。
1978年、スーズはサウロルニトレステスをドロマエオサウルス亜科として記載した。後の研究では、ヴェロキラプトル亜科のメンバーとするものが最もよく見られるが、2009年のフィリップ・J・カリーによる分岐分析ではより基盤的なドロマエオサウルス科のクレードに再分類され、そのクレードはサウロルニトレステス亜科と名付けられた。
以下のクラドグラムはロバート・デパーマら獣脚類研究グループによる2015年の分析に基づく。
ヤコブセンは2001年にサウロルニトレステスの歯骨を記載した 。その歯骨には15箇所の歯槽があり、歯は10本だけ遺されていた。歯骨の内側表面には 3つの歯型が確認された 。3つのうち2つは、噛んだ者の鋸歯によってついた痕跡である 。その痕跡は37mmの長さで、骨の表皮層を貫通して40mmの深さに達していた。
その遺された傷跡はサウロルニトレステスのものとはあまりにも違っており、同種の頭を噛んだという行動の結果によるものではなく、また共存していた別属のドロマエオサウルス類であるドロマエオサウルスのものとも合致しないとされた 。結局、種を特徴づける証拠は見出されなかったが、最も容疑者として有力なのはゴルゴサウルスやダスプレトサウルスのようなティラノサウルス科の若い個体であると思われる。
2001年、ブルース・ロスチャイルドらは、獣脚類の末節骨骨折の証拠に関する研究を発表し、彼らの行動についても少し言及した。彼らは82本のサウロルニトレステスの後肢の骨と9本の前肢の骨のうち、それぞれ2本ずつの疲労骨折の痕跡を見出したとしている。
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