![トロイア戦記 トロイア戦記](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a8/Posthomerica.tif/lossy-page1-400px-Posthomerica.tif.jpg)
『トロイア戦記』(トロイアせんき、希: τὰ μεθ᾿ Ὅμηρον, 羅: tà meth᾿ Hómēron, 英: Posthomerica, 直訳すると「ホメーロス以後」)は、古代ギリシャの詩人スミュルナのコイントス(クイントゥス)による紀元4世紀後半頃の長編叙事詩。『イーリアス』の最後の場面であるヘクトールの死から始まり、イーリオス陥落とギリシャ勢の離散までのトロイア戦争の最終盤を描く。全14巻で8800行近くあり、イーリアスの半分強の長さである。
クイントゥスの執筆目的は、叙事詩環の他の作品と同じように、二つのホメロスの叙事詩の間の隙間をきちんと埋めることにあるのは明らかである。
最初の4巻はアイティオピスと同じ期間を描いている。ヘルトールの葬儀後に始まり、アマゾーンの女王ペンテシレイア、エーオースの子メムノーン、アキレウスらの武勇と死ののち、アキレウス追悼の競技会が行われる。
第5巻から12巻までは、小イーリアスと同じ期間を描いている。アキレウスの遺品の武具を巡って大アイアースとオデュッセウスが争い、敗北後にアイアースは自殺する。ネオプトレモス、エウリュピュロス、デーイポボスらが登場し、パリスとオイノーネーが亡くなったのち、木馬が作られる。
残りの13、14巻はイーリオスの陥落と同じ期間を描いている。木馬によるイーリオス陥落、アキレウスの墓でポリュクセネーが生贄として殺害され、ギリシャ勢は出発し、嵐に遭遇して彼らは散り散りになる。
こうして、物語はイーリアスの終わった後で始まり、オデュッセイアの始まる前で終わっている。
トロイア戦記はホメロスに強く似せられており、長い間、ホメロスに劣ると考えられてきたが、現在では、ホメロスの叙事詩との関係において、どのようにクイントゥスの独創的で創造的であったかが理解されている。
イーリアスは、
で終わる。クイントゥスは歌い出しのような導入部なしに、その直後につなげる形で、
と物語を始めている。
物語の目的は、イーリアスを完結させ、登場人物たちにそれぞれ結末を与えることのようである。先行作品では味方との不和を抱えていた多くの人物、たとえばソポクレースの悲劇の材になるほど強い敵意をオデュッセウスに対して抱いていたピロクテーテースは、かなり手早くそれを克服して協力している。
ルーマニアの古典文学研究者のEugen Cizekは「クイントゥスがこの作品によって、ホメロスを補って、古代世界の英雄絵巻を完成させたことで、読者が伝説のトロイア戦争をはっきりと理解する助けとなっている」と評している。
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