![中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法 中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法](/modules/owlapps_apps/img/nopic.jpg)
中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法(ちゅうかじんみんきょうわこく-ホンコンとくべつぎょうせいく-こっかあんぜんいじほう、中: 中华人民共和国香港特别行政区维护国家安全法、英: Law of the People's Republic of China on Safeguarding National Security in the Hong Kong Special Administrative Region)は、香港特別行政区における国家安全維持に関する法律制度と執行メカニズムを整備するための中華人民共和国の法律。2024年には本法律を補完するため国家安全維持条例が施行された。
日本のメディアは本法について香港国家安全維持法(ホンコンこっかあんぜんいじほう)や香港国家安全法(ホンコンこっかあんぜんほう)などと呼称している。
本法は2020年5月28日の第13期全国人民代表大会第3回会議で『香港特別行政区が国家安全を守るための法律制度と執行メカニズムの確立・健全化に関する全国人民代表大会の決定』が採択され、全国人民代表大会から全国人民代表大会常務委員会に香港国家安全維持法制を整備する権限が付与されたのを受けて制定された。
この決定では、香港国家安全維持法制に対する立法方針と、全人代から全人代常務委員会へ同法制を整備する権限を付与すること、関係する法律の制定後に香港政府が公布し、即日施行することなどを定めている。香港立法会による審議の機会はない。
2020年6月1日、第13期全人代常務委員会第58回委員長会議が北京で開かれ、第13期全人代常務委員会第19回会議の開催期間を6月18日から20日までと決定し、同常務委員会会議の議事日程案が定められた。17日、委員長会議は全人代常務委員会法制工作委員会が行う香港特別行政区国家安全維持法起草工作(活動)の状況報告を聴取し、『中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法(草案)』を第13期全人代常務委員会第19回会議に提出することを決定した。18日、第13期全人代常務委員会第19回会議において委員長会議が提出した法律草案の議案の説明が聴取された。19日、グループ別会議が法律草案の審議を行った。20日、第13期全人代常務委員会第63回委員長会議が北京で開かれ、第13期全人代常務委員会第20回会議の開催期間を6月28日から30日までと決定し、同常務委員会会議の議事日程案が定められた。
6月30日、全国人民代表大会常務委員会は「香港国家安全維持法案」と「香港国家安全維持法」を香港特別行政区基本法の付属文書に追加する決定を全会一致(162票)で可決。習近平国家主席(党総書記・最高指導者)と林鄭月娥行政長官の公布により、現地時間同日夜11時(日本時間7月1日午前0時)より施行。
本法第36条から第39条では次のように規定されている。本法の効力範囲は香港特別行政区の地理的区域を含む。但し、これに限定されない。香港特別行政区内において香港外、即ち香港居住者以外の行為者、並びに香港で登録された船舶および航空機に関しても適用されるものとする。香港特別行政区の管轄区域外では、同法は国内法であるため、中華人民共和国の他の管轄区域(マカオ特別行政区を除く)でも適用される。即ち、日本人(日本国籍所有者)であったとしても香港、あるいは香港籍の船や航空機に搭乗した際に本法が適用され逮捕される可能性がある事を意味している。
委員長会議に委託され香港国家安全維持法草案を起草した全人代常務委員会法制工作委員会の担当責任者の説明によると、香港特別行政区国家安全維持法草案は6章66カ条あり、「総則」「香港特別行政区の国家安全維持の職責と機構」「犯罪行為と処罰」「事件の管轄」「法律の適用と手続」「中央人民政府駐香港特別行政区国家安全維持機構」「附則」に分かれるとしている。本法草案は実体法・手続法・組織法の内容を兼ね備える総合的法律であり、草案は以下の各分野の内容を包括していると説明している。
2020年6月30日23時過ぎに公表された香港国家安全法(草案と同じく6章66条)は、7月2日、全条文の日本語訳が公開された。
香港特別行政区は国家安全維持委員会(以下、「委員会」)を設立する。本委員会は香港特別行政区の国家安全を守るための事務に責任を負い、国家安全を守るための主要な責任を担い、かつ中央人民政府(国務院)の監督と問責を受ける。
委員会は行政長官が主席(議長)を担い、その構成員には政務司司長・財政司司長・律政司司長・保安局局長・警務処処長・警務処国家安全維持部門担当責任者・入境事務処処長・海関関長・行政長官弁公室主任が含まれる。
委員会の秘書処(事務局)は秘書長(事務総長)が率いる。秘書長は行政長官が指名し、中央人民政府に報告して任命する。
委員会の主な職責は以下となる。
委員会は国家安全アドバイザー(顧問)を設置する。本顧問は中央人民政府が任命し、委員会が履行する職責に関係する事務について諮問意見を提供する。顧問は委員会会議にも列席する。
委員会の執行体制は、香港国家安全維持法に先行して同様の国家安全維持法が施行されていたマカオ特別行政区の国家安全維持委員会が参考にされた。
香港特別行政区政府警務処は国家安全維持部門(以下、「維持部門」)として国家安全処を設立し、法執行力を整備する。
維持部門責任者は、行政長官が任命し、就任する時、中華人民共和国香港特別行政区基本法の支持、中華人民共和国香港特別行政区に忠実であること、法を遵守し、秘密を守ることを誓約しなければならない。維持部門は、香港特別行政区外から専門要員や技術要員など、国家安全の維持執行に協力する者を招聘することができる。
香港特別行政区政府律政司は専門の国家安全犯罪事件検察部門(以下、「検察部門」)を設立し、国家安全に危害を及ぼす犯罪事件の検察活動とその関係する法律事務に責任を負う。
中央人民政府(国務院)は香港特別行政区に国家安全維持公署(「駐港国家安全維持公署」。以下、「国家安全保障局」)を設置する。
国家安全保障局の主な職責は以下となる。
国家安全保障局は香港特別行政区中央人民政府連絡事務所、香港特別行政区特別委員会事務所、香港の中国人民解放軍との連携を強化する。
国家安全保障局は、香港特別行政区国家安全維持のための委員会と調整機構を設置し、香港特別行政区国家安全の維持を監督・指導する。国家安全保障局の作業部門は、国家の安全の維持のために香港特別行政区の関連機関と調整機関を確立し、情報の共有と行動の調整を強化するものとする。
国家安全保障局、外交部駐香港特別行政区特派員事務所、香港特別行政区政府は、香港特別行政区内の外国および国際機関の組織を強化するために、在香港の外国、海外NGOや新聞・通信社の管理、サービスについて必要な措置を講じるものとする。
国家安全保障局は、本法律に基づき国家を危険にさらす罪について管轄権を行使することができる。
安全維持に対する犯罪の管轄では、国家安全保障局が調査に責任を負う。最高人民検察院は、関連する法的機関を指定して、法的権限を行使し、最高人民法廷は、司法権を行使するために関連する裁判所を指定できる。
訴訟の調査、審査、起訴、罰則の実行、およびその他の訴訟手続きは、中華人民共和国の刑事訴訟法の関連法に準拠するものとする。
容疑者は、最初の尋問または強制措置の採択の日から被告として弁護士に委任する権利を有する。容疑者と被告が合法的に逮捕された後、できるだけ早く司法機関による公正な裁判を受ける権利を有する。
第3章「犯罪行為と処罰」は6節に分かれ、国家分裂罪・国家政権転覆罪・テロ活動罪・外国又は境外勢力と結託し国家安全に危害を及ぼす罪の四種類の犯罪行為の具体的な構成および相応の刑事責任と、それに対応した処罰規定および効力範囲を規定する。異なる状況を区分し、四種類の犯罪行為の刑罰を区別して規定する。
効力範囲は以下を含む:
有罪となった場合、最高で終身刑または10年以上の懲役。積極的に参加した者は3年以上10年以下の懲役。その他参加者は3年以下の懲役、或いは拘留・保護観察処分。
特定の状況を除き、香港特別行政区は本法規定の犯罪事件に対し管轄権を行使する。
特定の状況は55条に規定され、
以上の場合を除き、この法律で規定された刑事事件を管轄するものとする。
香港特別行政区は国家安全に危害を及ぼす犯罪事件の立件捜査・公訴・審判・刑罰の執行を管轄し、本法と香港特別行政区の地方法を適用する。
香港特別行政区政府警務処国家安全維持部門が国家安全に危害を及ぼす犯罪事件を処理するとき、香港特別行政区の現行法律が許可する警察など執行部門が重大な犯罪事件を調査する時に採る各種措置を採ることができる。
香港特別行政区の管轄下での国家の安全維持に対する罪の裁判は、公訴手続に従う。裁判は公の場で行われるべきである。国家機密、公序良俗などを鑑み、公聴会に適さない場合、報道関係者および公衆は公聴会の全部または一部の公聴を禁じられるが、判決の結果は公表される。
香港特別行政区行政長官は現任若しくは資格に合致する前任裁判官・区域法院法官・高等法院原訴法廷法官・上訴法廷法官・終審法院法官の中から若干名の法官を指定すべきであり、また暫委若しくは特委法官の中から法官を指定でき、国家安全に危害を及ぼす犯罪事件を処理する責任を負う。
本法の解釈権は全国人民代表大会常務委員会に属する。
香港特別行政区の現行法と本法が一致しない場合、本法の規定を適用する。
BBCによると2020年7月1日に香港警察は「香港国家安全維持法」に違反したとして男女10人を逮捕した。この中には香港の独立をうたう旗を掲げたデモ参加者も一人含まれる。この他に禁止されていた集会に参加したとして約360人が拘束された。
本法をめぐっては、香港での言論の自由や政府に対する抗議活動が押さえつけられるという懸念の声があるほか、香港の高度な自治を保障した「一国二制度」を踏みにじるものだとする批判がなされている。国際世論には香港市民への援助の声もあり、かつて香港を統治していたイギリスは香港からの「逃げ道」を作るとしている。
司法の独立の精神や「一国二制度」の原則に背くもので、表面上は国家の安全を守るためといいながら、実際は香港市民の人権を奪うものだ、などと反発。
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