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アダプト (サカナクション)


アダプト (サカナクション)


アダプト』(日本語発音: [adapɯto], 英: ADAPT)は、日本のロック・バンド、サカナクションが2021年11月20日から展開する無観客配信ライブ、有観客ライブ、コンセプト・アルバムのリリースを含めた一連の音楽プロジェクト。新型コロナウイルス感染症が流行している状況下での経験を作品や活動として表現する一連の企画の第一章として位置付けられており、第二章『アプライ』へと続いていくことがアナウンスされている。本記事ではこれらの企画の第一章として内包される各ライブやコンセプト・アルバムについて解説する。

背景

2019年:バンドに合った楽曲のリリース手段の模索

2019年6月19日、サカナクションは7枚目のオリジナル・アルバム『834.194』をリリースした。山口はこのアルバムをリリースした直後のインタビューなどにおいて、CDのリリースをメインとした楽曲の発表を今後は行わない可能性があることに言及している。これは近年サカナクションが世の中で音楽を聴く手段としてストリーミングが台頭してきている状況を受けて、CDやライブDVDなど発売する際にジャケット写真やデザインなどにも力を入れ「音楽ソフトのプロダクトとしての価値の拡張」をテーマに商品展開を行ってきた事を踏まえての発言である。

このようにバンドとしての楽曲制作のモチベーションそのものにネガティブは変化はないものの、完成した新曲をリリースする手段についてはこれまでとは違う新たな方針を考え始めるようになった。

2020年:コロナ禍による「834.194 光」ツアー休止以降の経験

2020年1月からは『834.194』の二度目のリリースツアーとして日本全国のホールを巡る「SAKANAQUARIUM2020 "834.194 光"」が開催されたが、日程の半ばで新型コロナウイルス感染症の影響により政府からイベントの開催の必要性を検討するよう要請されたことを受け、公演の延期を決定した。その後残りの全日程について延期を繰り返したもののツアー再開は叶わず、アリーナでの追加公演を含め予定されていた26公演のうち14公演は開催中止となった。

ツアーの休止が決定してからサカナクションはライブの代替としてさまざまな企画を実施した。バンドとしてはこれまでにリリースしたライブ映像作品をYouTubeでの無料配信が企画され 、山口個人としては自身のSNSを通じてファンや他のクリエイターと積極的に交流を深めていった。この時期から山口はこうしたコロナ禍をきっかけとした経験を音楽として表現していくことに意欲を示している 。これにあたって山口は自身の経験よりもあくまでファン達の感情を代弁したいと考えており、ファン達の状況を取材するためにもSNSを活用していると語った。

またいくつかのミュージシャンが無観客の配信限定ライブを企画している状況をふまえて、オンライン・ライブは有観客ライブが出来ない状況に仕方なく開催するものではなく、それ独自の価値を創造し表現の手法を増やしていくことが重要であると語っている。

その後、2020年7月17日にはバンド史上初のオンライン・ライブ「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」の開催を発表した。この公演について山口はこれまで通りのライブをただ観客がいない状態で撮影したものではなくミュージック・ビデオなどサカナクションがこれまでに取り組んできた音楽のための映像表現をライブに取り込むことで有観客ライブとは異なる新しい価値する意図があったと語っている。

9月18日には『834.194』以来初となる新曲「月の椀」がトヨタ自動車の「ヤリスクロス」のCMに使用されることが発表された。当時タイトル未定の状態で発表されたこの楽曲はCMがオンエアされている期間にリリースしたいと考えていたものの山口の体調不良などにより思うように進んでいないことを語った。

11月24日には「834.194 光」ツアーが中止となって以降初となる有観客ライブとして「SAKANAQUARIUM 暗闇」の開催が発表された。この公演では新型コロナウイルス感染症対策に効果のある加工が施された商品がツアーグッズとして発売される事などがアナウンスされていたが、開催地の首都圏を中心に新規感染者が増加している状況を鑑みて中止となった。

2020年以降の経験を通して山口は「この先サカナクションはライブで盛り上がる曲だけで無く、音楽を聴く人の心の隙間に寄り添うような音楽を作らなくてはいけない」という目的を見つけている 。ツアー休止以降のサカナクションの活動を追ったNHKスペシャルの番組の最後で、山口はコロナ禍を通しての経験を以下のような詩として表現した。

2021年:コロナ禍を通した経験の作品・活動への還元

2021年の元日に放送されたラジオで山口は年内にアルバムをリリースする事を目標にしている事を語った。4月2日には山口が全国のZeppで演奏を行うファンクラブ会員限定のツアー「NF OFFLINE」の開催が発表された。このZeppツアーはメンバー全員で出演するこれまで通りの有観客ライブとして計画されていたが、草刈が体調不良となったことでリハーサルを行えなくなったことをきっかけに山口が一人で出演する形に変更された。「NF OFFLINE」は2021年の5月から7月にかけて開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発出が決定された事により5月分の公演が延期となった。これを受けてツアーの公演内容を山口の自宅から配信する「NF OFFLINE FROM LIVING ROOM」が開催されることとなった。

山口は以前からコロナ禍において有観客ライブとは異なるオンライン・ライブ独自の価値を追求していくことの必要性を敷衍していたが、「NF OFFLINE」で当初の計画には無かった「まずオンライン・ライブを開催してから有観客ライブに移行する」という流れでツアーを終えたことに対して、それぞれの環境に関わらず視聴できるオンライン・ライブを設けたことによりその収益を後の有観客ライブの赤字補填に充てることが出来ると言う点などから手応えを感じたと語った。

その後、6月には参天製薬の目薬ブランド「サンテFX」シリーズの新CM楽曲として「プラトー」を、7月にはアリーナ・ツアーの開催を、そして8月にはフジテレビ制作の映画作品『劇場版 ルパンの娘』の主題歌として「ショック!」を新たに発表した。この時期には既に新しいアルバムの制作に本格的に取りかかっており、11月頃にシングルをリリースをせずにアルバムをリリースする事と、オンライン・ライブを開催してからアリーナ・ツアーへと移行していく流れを計画していることを山口は語っている。

2021年10月22日、バンドの公式SNSからコロナ禍における経験をコンセプトした二部構成の音楽プロジェクト『アダプト』と『アプライ』の始動が発表され、ニュースサイト等でも記事が公開された。

制作

コンセプトとプロジェクトの流れ

プロジェクト全体のコンセプトとして「サカナクションがコロナ禍で巻き起こる現象にどのように"適応"してきたのか、"適応"していくのかを体現する」事が目標にされている。このテーマを表現する為にまずはオンライン・ライブを開催し、アリーナ・ツアーへと移行し、当初はコンセプト・アルバムのリリースをもってしてプロジェクトが終了となる予定であったが、後にホール・ツアーの開催が新たに発表された。そして「アダプト(適応)」にまつわる企画が終了した後はその続編として「アダプトを通した経験をこの時代にどう"応用"していくのかを体現する」事を目標とした「アプライ(応用)」というプロジェクトが新たにスタートする予定となっている。

プロモーションとマーケティング

プロジェクトに関する情報の解禁

本プロジェクトに関する情報で最初に解禁されたのは2021年から2022年にかけて開催されたライブツアーについてであり、2021年7月20日にバンドの公式WebサイトやSNSから告知が行われた。当時は音楽プロジェクトについての言及はなく、アリーナツアーの開催とその日程についての情報のみが解禁された。その後、2021年10月22日にバンドの公式SNSから二部構成の音楽プロジェクトについて発表され、各種ニュースサイトでも記事が公開された。プロジェクトについての情報が発表されてからオンライン・ライブ開催までのおよそ一か月間には過去のライブ映像のYouTube配信が企画された。

2021年11月21日、無観客ライブ「SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE」の二日目の配信が終了した直後にはコンセプト・アルバム『アダプト』のリリース日が発表された。11月21日にはアルバムに収録予定の楽曲の中から「プラトー」の先行リリースが発表された。なお、同曲は配信リリース前日の12月2日にラジオ放送が解禁されている。12月11日には先のオンライン・ライブをビデオ・オン・デマンド方式で再配信する「re:アダプト ONLINE」の提供開始と、この日からスタートしたアリーナ・ツアーの日本武道館での追加公演が発表された。またこの追加公演の模様を有料生配信することも後に発表された。翌年2022年1月24日には「ショック!」のラジオ放送が解禁され、先行リリースも発表された。

2022年3月4日、コンセプト・アルバムの収録曲目及び「プロジェクト最終章」と銘打たれたホールツアーの開催が発表され、後にツアータイトルが「SAKANAQUARIUM アダプト NAKED」となることも明らかにされた。

アルバム発売直前の3月25日には「月の椀」のラジオ放送が解禁された。

商品展開

コンセプト・アルバム『アダプト』は通常盤の他に初回生産限定盤A(Blu-ray付属)と初回生産限定盤B(DVD付属)、そしてファンクラブ会員向けにNF member -Limited Edition-(Blu-rayとCD付属)が完全生産限定でリリースされる。付属のBlu-rayおよびDVDには2021年に山口の自宅から生配信されたオンライン・ライブ「NF OFFLINE FROM LIVING ROOM」の模様が、NF member -Limited Edition-の特典CDには岩寺、江島、岡崎、草刈が作曲した舞台「マシーン日記」のサウンドトラックが収録される。またこのアルバムからは「プラトー」と「ショック!」の2曲がアルバムに先行して配信限定でリリースされている。

タイアップ

アートワーク

本プロジェクトのロゴや関連するビジュアルのデザインは平林奈緒美が担当している。オンライン・ライブの開催直前に公開されたメンバーのビジュアルはモノクロの写真にブロックノイズ風の加工が施されており、これはライブ本編で使用された演出映像や先行配信された「プラトー」のジャケットなどのデザインとリンクしている。「ショック!」の先行配信用のジャケットにはオンライン・ライブ本編に出演した嶋田久作の写真が用いられている。

アルバムのジャケットは商品形態に合わせて3種類あり、それぞれアメリカのクリエイター・TraceLoopsによるコラージュ作品の制作過程があしらわれている。

配信ライブ・ツアー

SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE

音楽プロジェクト『アダプト』の幕開けとなるオンライン・ライブ「SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE」が2021年11月20日と21日に生中継で配信された。総合演出は前回のオンライン・ライブ「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」に引き続き田中裕介が務めた。「演劇×MV×ライブ」というコンセプトのもとで演出が構成され、「アダプトタワー」と名付けられた4階建てビル相当の造形物の中でバンドが演奏した。このライブではバンドと同じ空間でキャストが演技を行う演出が取り入れられ、川床明日香をはじめるうこ、THE 2の古舘佑太郎、エモン久瑠美、嶋田久作らが要所で登場した。また本公演は参天製薬「サンテFX」の提供とソフトバンク「5G LAB」の協賛が発表された他、ビジュアル・エフェクト担当としてRhizomatiksも参加したことが明かされている。

配信の前日には日本テレビ「スッキリ」で取材が行われ、会場から生中継が行われた。

本公演はライブが開催された二日間とその後一週間のアーカイブ視聴期間が設けられた。その後アリーナ・ツアーの開催期間に合わせて11月21日の公演をビデオ・オン・デマンド方式で再配信する「re:アダプト ONLINE」の提供が行われた。

SAKANAQUARIUM アダプト TOUR

本プロジェクトのタイトルを関した有観客ライブ・ツアー「SAKANAQUARIUM アダプト TOUR」が2021年12月11日から2022年1月30日にかけて開催された。本ツアーの開催は音楽プロジェクト「アプライ」の発表よりも以前にアナウンスされており、当初は全国6都市のアリーナで計12公演が行われるとされていたが、ツアー初日の愛知公演終了直後に日本武道館での2公演が新たに追加で発表され全国6都市14公演となった。バンドの有観客ライブとしては新型コロナウイルス感染症の流行により行程のなかばで中断された「SAKANAQUARIUM2020 "834.194 光"」以来およそ1年10か月ぶりの公演となる。また、当時のツアーにて導入予定であったバンドオリジナルの音響システム「SPEAKER+」も本ツアーで初めて採用されている。

本ツアーはオンライン・ライブに引き続き参天製薬「サンテFX」の提供が発表されており、チケット情報サイト等では「SAKANAQUARIUM アダプト TOUR supported by サンテFX」というツアータイトルも使用されている。

日本テレビ「スッキリ」で取材が行われ、番組の総合司会を務める加藤浩次が1月15日の札幌公演で前説を行うことが発表された。この模様は2月1日に同番組で放送された。

1月16日には武道館の追加公演2日間の配信「SAKANAQUARIUM アダプト TOUR STREAMING LIVE at NIPPON BUDOKAN」が発表された。先の無観客を前提とした「アダプト ONLINE」とは異なりこちらは有観客ライブの生配信となった。

SAKANAQUARIUM アダプト NAKED

本プロジェクトの最終章と位置づけられたホールツアー「SAKANAQUARIUM アダプト NAKED」がアルバムのリリース後に開催される。このツアーは新型コロナウイルス感染症の影響により行程の半ばで中断となった「SAKANAQUARIUM 2020 "834.194 光"」以来となるホールツアーとなっており、今回のツアーではこの「光ツアー」で公演が中止となった会場の多くが再び開催地に選ばれている。ツアーは当初6月からのスタートを予定していたが、メンバーのプライベートでの問題やその他の事情から十分なリハーサルが行えなかった事などを理由に序盤の大阪および京都公演が延期となった。その後、山口が体調不良を原因に休養を取ることを決定し、はじめは秋までの公演をさらに延期する措置を取ったが、最終的にこのツアーは全公演の中止が発表された。

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コンセプト・アルバム『アダプト』

オンライン・ライブ、アリーナ・ツアーに引き続く本プロジェクトの大きな企画として、コンセプト・アルバム『アダプト』が2022年3月30日にリリースされた。先のライブで演奏された楽曲を含む全9曲が収録される。なお9曲目の「DocumentaRy of ADAPT」はCDのみの収録となる。

ミュージック・ライブ・ビデオ

本プロジェクトに関連する楽曲からは「プラトー」「ショック!」「月の椀」のミュージック・ビデオが現在公開されている。どちらも「SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE」で配信されたライブ映像となっている。サカナクションはこれまでに6thシングルの表題曲「僕と花」のミュージック・ビデオを一発撮りで収録しながら模様をUstreamで配信するという試みを行っているが、今回公開された映像は「SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE」で実際に配信された映像をそのまま使用している。バンドではこれらの映像を通常のミュージック・ビデオとは区別する意図で「ミュージック・ライブ・ビデオ」と呼称している。

評価

ライブに関する批評

ロッキング・オンの古河晋はライブ前半の演劇などの要素を取り入れた演出について、サカナクションの音楽を今までにない視点から捉えることができ「その芯にある体温に触れられた感触があった」と評した。テレビプロデューサーの佐久間宣行は自身がパーソナリティを務めるラジオ番組「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」で武道館公演を映画監督の大根仁と共に観覧した事を話題に挙げ、「コロナ禍でしか出来ない表現を探し、それにファンがついていっている」という点からサカナクションが現代のバンドのトップランナーであると評した。Real Soundの森朋之は「アダプト」プロジェクトが無観客のオンライン・ライブを経てから有観客のアリーナ・ツアーへと移行した流れに触れ、オンラインと生のライブにおける表現の使い分けという課題に対してサカナクションは最適解の一つを示したと評した。SENSAの栗本斉はライブ中盤でインスト曲「DocumentaRy」を演奏した際の演出などについて「コロナ禍において一気に影を潜めてしまったクラブ・カルチャーへのオマージュのようにも感じられる」と評した他、ライブ全体について「先進的なロック・バンドかつポップスターでもあるサカナクションの両面が共存していた」と評価した。元[Alexandros]のメンバーである庄村聡泰は武道館公演の率直な感想を「ヤバい。ヤバ過ぎる。」と表現した。また舞台セットやサウンドシステムなどの演出を一通り評価しつつも、「結局のところ最も良かった点はメンバーによる生の演奏だった」と語った。

チャートおよび認定と売り上げ

チャート

解禁日と発売日一覧

脚注

注釈

出典

TOKYO FM『SCHOOL OF LOCK!』の放送後記

バンド公式・所属事務所・関係者による告知

CD・DVD・Blu-rayのチャートと売り上げ

参考文献


Text submitted to CC-BY-SA license. Source: アダプト (サカナクション) by Wikipedia (Historical)