ユニバーサルヘルスケア(英語: Universal health care, Universal care)、ユニバーサルヘルスカバレッジ(英語: Universal health coverage, Universal coverage)、普遍主義的医療制度(ふへんしゅぎてきいりょうせいど)、国民皆保険(こくみんかいほけん)とは、市民の全員に保健医療サービスおよび医療費補助を提供する保健プログラムのこと。
WHOによれば、社会の構成員すべてに対し特定の福利厚生パッケージを提供することで、医療費リスクから保護し、医療アクセスを改善し、保健状態の向上を図ることを目的とした制度である。「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けられる状態」を指し、これは同時に医療の利用により人々が経済的困難に陥らないようにすることを含んでいる。この点で、ユニバーサルヘルスケアは、社会保障と医療行政の両方に関わる概念である。
ユニバーサルヘルスケアは、カバーされている住民の割合、必要とされるサービスのうちカバーされるサービスの割合、全体の費用の中でカバーされる割合、という三つの要素が考慮されるべきとされている。ユニバーサルヘルスケアは、すべてのケースにおいて最善の形態が存在する概念ではないし、また万人のすべてのケースに対応できるものでもない。
OECD諸国においては、ギリシャ、米国、ポーランドを除いたすべての国で、基本的保健サービス(GP受診・専門医・検査・手術・医療用品)におけるカバーを達成している。歯科および処方薬については、これらの国では一般的に部分的補助となる。 ギリシャにおいては国家経済破綻のため、長期失業者や保険に加入しない自営業者が発生した(加入率79.9%)。 米国では現在オバマケアが進行中である(加入率88.5%)。ポーランドでは保険料不払い者が資格を喪失するようになった(加入率91.6%)。
ソ連はユニバーサルヘルスケア制度を1937年に制定し、1969年にそれぞれの地区で医療へ平等にアクセスできるようになった。ニュージーランドでは、1939年から1941年の間に一連のユニバーサルヘルスケア制度が整備された。英国においては1948年に国民保健サービス(NHS)が制定された。
その後は北欧諸国へ広まり、スウェーデン(1955年)、アイスランド(1956年)、ノルウェー(1956年)、デンマーク(1961年)、フィンランド(1964年)と続いた。 日本(1961年)、カナダサスカチュワン州、(1968-1972年)、オーストラリア(1974・1984年)でも制定された。
国営によるユニバーサルヘルスケア制度は、南ヨーロッパ諸国ではイタリア(1978年)、ポルトガル(1979年)、ギリシャ(1983年)、スペイン(1986年)、アジア諸国では韓国(1989年)、台湾(1995年)、またイスラエル(1995年)で制定された。
70年代以降では、西ヨーロッパ諸国ではオーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルクなどで社会保険制度によるユニバーサルヘルスケアが制定され、擬似的なシステムだがオランダ(1985・2006年)、スイス(1996年)でも制定された。
現在のユニバーサルヘルスケア制度の多くは、第二次世界大戦以降の医療制度改革によって生まれたものである。すべての国が署名した世界人権宣言(1948年)の第2502章において、すべての人が利用できなければならないとされていることによる。
1952年の国際労働機関102号条約では、社会保障の最低基準の一つとして医療を挙げ、以下を定めている。日本は批准している。
多くの国々では、ユニバーサルヘルスケアの原資は複数のモデルにて調達している。主な原資は国の一般歳入であるが、いくつかの国々では特定財源(個人や雇用者への課税)や個人負担(直接負担または保険料として負担)とする制度も持っている。
ヨーロッパにおける制度の多くでは、公的負担・民間負担をあわせたものを原資としている。
ユニバーサルヘルスケアの原資調達において、主流となっているのは税収である(ポルトガル、スペイン、デンマーク、スウェーデン)。いくつかの国々(ドイツ、フランス、日本など)では、複数提供者(multi-payer)制度であり、医療費の原資は政府と民間保険者の保険料の二つを用いている。また独立基金モデルでは、法的根拠を持つ非営利基金組織が保険者となり、多くの場合で雇用者と雇用主で保険料を負担している。
地方自治体と中央政府が、共同で原資負担しているシステムもある。ある制度の例では、基礎的な医療は地方自治体が提供するが、専門的医療の提供はより大規模な組織(自治体組合や道州レベル)が担い、医薬品は州単位の機関が負担している。
ユニバーサルヘルスケアは手ごろな費用で広範囲に展開可能である。医療費負担制度を累進的にすることで全体の収入不平等を是正することができる。
幾つかの国では、ユニバーサルヘルスケアにおける自己負担部を補助するための私的保険や、ユニバーサルヘルスケアの対象とならない追加オプションサービス(処方薬や歯科)を受けるための私的保険が存在する。フランスでは人口の96%が自己負担部を補助する私的保険に加入している。オランダでは人口の89%が追加オプションサービスのための保険に加入している。
国民健康保険のある国
この制度においては、指定された保険に加入することを強制しており、その保険は国営のものである。国営保険か民間保険かを選ぶことができる国もあり(ドイツ、スイスなど)、一方で唯一の国営保険になっている国もある(カナダなど)。
採用国
単一支払者制度(single-payer)による医療制度では、政府(もしくは政府関連機関)が保険料を徴収し、そして政府がすべての医療費を負担する。単一支払者制度でのサービス提供は、保険者と契約した民間組織による場合もあれば(カナダなど)、保険者が自ら医療機関を抱え直接サービスを提供することもある(英国など)。
単一支払者制度(single-payer)という区分は、ヘルスケア原資が単一の公的機関によってのみ負担されていることと定義されており、サービス提供の区分や医師の雇用主のことではない。
税金を原資とする場合、市民は保健サービスの原資をさまざまな税の形で負担する。必要予算は人口によりけりなので、地方自治体によって税率が違うことが多い。
いくつかの国の制度では、独立した保健税として課税されている(特に英国、アイルランド、オーストラリア、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、フィンランド、デンマークなど北欧諸国)。他の医療制度を採用している国では、社会保険税として様々な社会保険財源らを一括課税し、そして医療費請求を代理で支払うか、その一部を負担したりする。
社会保険プログラムでは、雇用者、自営業者、企業、政府が、単一もしくは複数の基金に原資を供出する。基金では、単一または複数の医療提供者とあらかじめ設計されたベネフィットパッケージを提供するよう契約を交わしている(保険医)。このシステムでは、政府保健省には、基金(保険者)が公的医療を適切に運用するよう指導する責任がある。
民間保険モデルでは、保険会社が雇用主・団体・個人・家族に対して、その集団構成を元に積算したリスクを基準に、直接サービスを提供する。このモデルの保険者には、営利企業・非営利団体・コミュニティ共済組合などがある。一般的に民間保険モデルは、強制加入である社会保険プログラムとは対照的に任意加入である。
いくつかのユニバーサルヘルスケア採用国においては、民間保険は、医療費が高額な特定の健康状態を持つ人や、現在通院中の人は加入できないことが多い。例えば英国では、最大のプライベート保険者のひとつであるBUPAでは、highest coverage policyに基づいて長々とした例外リストがあり、こうした疾患の多くは機械的に国民保健サービスに回っている。
ガーナにて達成されている。
オーストラリア、ニュージーランドにて達成されている。
ヨーロッパの先進諸国では、加入者の範囲や保険料の高低、税金の投入率等は様々であるがほとんどの国で公的医療保険制度がある。
そのほかチェコ、ハンガリー、アイスランド、イスラエル、ノルウェー、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、オーストリー、フランス、オランダ、スペイン、トルコ、ベルギー、ルクセンブルク、スロバキア、エストニアにて達成されている。
カナダにて達成されている。
アメリカ合衆国では唯一プエルトリコが達成している。
チリにて達成されている。
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