京畿道(キョンギト、けいきどう、朝: 경기도)は、大韓民国北西部、朝鮮半島中西部に位置する道である。
朝鮮八道における「京畿道」からソウル特別市と仁川広域市、および朝鮮民主主義人民共和国の統治範囲を除いた地域。道庁所在地は水原市。
人口はソウル特別市より多く、韓国で最も人口の多い広域自治体である。首都ソウル(京城)と港町仁川をつなぐことで栄えてきた地域である。
京畿道は紀元前18年、三国時代から政治的に大変重要な場所だった。三国の一つであった百済の始祖温祚王が河南の慰礼城を首都に定めて以来、5世紀半ば漢江流域は高句麗に併合されたが、553年(真興王14年)新羅の領土となった。その後、三国を統一した統一新羅の全国9州のうち、今の京畿地域はハンサンジュ(漢山州)と称されるようになった。
統一新羅の次の王朝である高麗の太祖王建が開城を首都に定めてからは、京畿地域は歴史の中心舞台として浮上した。1018年(高麗顕宗9年)から当地域を正式に「京畿」と呼ぶようになった。そして朝鮮時代には、太祖李成桂が首都を漢陽に定めた後京畿地域を再調整し、太宗・世宗時代からは広州・水原・驪州・安城を含む東南地域が京畿に移属されるなど、現在の京畿道とほぼ同じ行政区域となった。1895年からは従来の行政区域が改編され新しく二十三府制が実施されることになり、京畿道は漢城府、仁川府、忠州府、公州府、開城府領域に属するようになった。
日本統治時代には1910年10月1日、従来の漢城府が京畿道に編入され京城府に改称されることになり、道庁が設置された。終戦と同時に大韓民国政府が発足し、1946年京畿道から首都ソウル特別市が分離され、京畿道の一部地域がソウル特別市に編入された。1967年には京畿道の道庁所在地がソウル特別市から水原市へと移された。1981年京畿道から仁川市が分離され、1989年と1995年金浦郡の一部、甕津郡、江華郡などの京畿地域が仁川広域市に編入された。
京畿道は、朝鮮半島の中央西側の東経126度と127度、北緯36度と38度の間に位置しており、面積は国土全体の10.2%の10.114km2である。北は86kmの休戦ラインを挟んで黄海北道、黄海南道、江原道、西は黄海(413km)に面しており、東には江原特別自治道、南には忠清北道、忠清南道と隣接している。その中央には韓国の首都・ソウル特別市が位置している。道庁所在地は水原市であるが、北部地域の行政上の便宜を図るため議政府市にも「北部庁舎」(旧称:第2庁舎)が設置されている。
京畿道の気候は、夏と冬の気温差が激しい大陸性気候であり、はっきりした四季がある。春は暖かく、夏は高温多湿。秋は涼しく、冬は寒くて雪が降る。年平均気温は11 ℃から13 ℃であり、北東部の山岳地帯が低く、南西側の海岸地域が少々高い。1月の平均気温は京畿湾付近が-3 ℃、南漢江流域が-3 ℃から-4 ℃である。北漢江と臨津江流域が-4 ℃から-5 ℃と海岸から内陸に行くほど冷たく気温の差が大きくなる。特に北朝鮮との休戦ラインに近い東豆川市や坡州市、南東部の山岳地帯にある楊平郡などは寒さが厳しい。夏は冬に比べ地域差が少なく、内陸地方は京畿湾付近より高いほうである。一番暑いところは平沢市で、8月の平均気温が26.5 ℃である。
年平均降水量は1,100mm内外と夏は雨の量が多く、冬は乾燥した日が続き降水量が少ない。北東部内陸地方である北漢江流域と臨津江上流は、降水量が1,300mmから1,400mmと海岸地方の900mmより多い。
1月の平均気温: ソウル(-2.5℃) 仁川(-2.4℃) 水原(-3.2℃) 利川(-3.9℃) 楊平(-4.9℃) 江華(-3.9℃)
8月の平均気温: ソウル(25.4℃) 仁川(24.9℃) 水原(25.2℃) 利川(24.8℃) 楊平(24.6℃) 江華(24.4℃)
京畿道は、東から西へ流れる漢江により南北に分かれているのが特徴である。漢江地域の北側は主に山が多く、南側は平野が広がる。 京畿道の地形は東高西低に代表されるが、広州山脈と車嶺山脈が東のほうに伸びて次第に低くなり、西には金浦平野、京畿平野、平澤平野が広がっている。
京畿道は川と湖、山と海の美しい自然に恵まれている。代表的な川である漢江、臨津江、安城川などが黄海に流れ込み、京畿平野、延白平野、安白平野などが川の周辺に肥えた平野地帯を形成している。京畿道には中国方向に伸びている広州山脈と車嶺山脈などがある。広州山脈には明智山 (1,267m) ・国望峰 (1,168m) ・龍門山 (1,157m) など1000mを超える高い山が多くある。花崗岩地帯が発達しているため、花崗岩の剥離作用による奇岩絶壁が美しく谷が深い。車嶺山脈は忠清北道と境を接しており、比較的高度の低い丘陵性山地である。
京畿道内の国立公園としては、議政府に位置する北漢山国立公園があり、道立公園としては祝霊山自然休養林、南漢山城道立公園、加平・恋人山道立公園、ムルヒャンギ樹木園 などがある。その他にも東豆川市の逍遥山、楊平郡の龍門山、安養市・果川市の冠岳山などの名山や漢江・臨津江など美しい自然景観に恵まれている。
京畿道は韓国の近代化および都市化に伴い人口が急激に増加した地域と言える。1960年には274万8765人、1970年には329万6950人、1980年には493万3862人、1992年には661万9629人、2000年には898万2298人、2009年には1154万9091人へと増加した。2009年現在所帯数は428万4475所帯、所帯当たりの人口数は2.7人、人口密度は全国平均492人/km2より高い1134人/km2である。
2014年現在、人口数が最も多い地域が水原市の120万1564人である。その次は、高陽市(100万2152人)、城南市(97万357人)の順となっている。人口が一番少ない地域は漣川郡の4万5578人であり、加平郡(5万6815人)、果川市(6万1123人)の順である。なお、人口密度が最も高い地域は富川市の1万6269.7人/km2である。
京畿道は首都ソウルの背後生産団地として電子、機械、重化学、鉄鋼などの重工業と繊維などの軽工業、農畜水産、林業などの各種産業が発達している。近年、高賃金などの影響で韓国経済における各種製造業の割合が低く、従来の産業構造を現代的に改善するため、京畿道も多角的に取り組んでいる。京畿道は先端IT産業とデザイン、コンベンション、観光などソフト競争力中心のサービス産業の育成と、平沢港を活用した北東アジアの貿易ハブとして成長するため、積極的に投資を行っている。その他にも、利川米や陶磁器などが特産品として長く知られており、水原のサムスン半導体、坡州のLG-LCD団地、利川のハイニックス半導体など韓国を代表するグローバルIT企業の製造拠点が多数立地している。
京畿道は2013年9月現在、28市3郡(未収復地域を除く)で構成されている。そのうち19市が南部に、9市3郡が北部にある。
韓国の京畿道のうち、軍事境界線以北の北朝鮮実効支配地域に存在する名目上の行政区画で、1市2郡がある。以北五道委員会に属する市長・郡守が置かれている。
北朝鮮の行政区画では黄海北道および開城特別市に属する。
京畿道は国際的な航空交通が非常に発達している。韓国の関門である仁川国際空港が近いうえ、第2の国際空港である金浦国際空港も近い。韓国最初の鉄道の京仁線と最初の高速道路の京釜高速道路、京仁高速道路が通過する地域として、ソウル大都市圏および首都圏に属しソウル市と緊密に連携しているため、交通アクセスが至便である。
道路の舗装率は平均86.5%に達しており、またソウル市を中心とした鉄道網も発達している。地下鉄1号線と直通する首都圏電鉄1号線は、南は安養市・水原市・平沢市などを経て忠清南道牙山市まで、北は議政府市を経て東豆川市まで運行している。また、3号線は北部の高陽市まで、4号線は果川市を経て始興市まで、7号線は北は議政府市から南は富川市まで、8号線は城南市まで運行している。このほか、ソウル市城東区の往十里駅から城南市・龍仁市を経て水原市まで結ぶ盆唐線もある。さらに、坡州市の臨津江駅から高陽市・ソウル市・九里市・南楊州市を経て楊平郡の砥平駅へ至る京義・中央線、ソウル市中浪区上鳳駅から九里市・南楊州市・加平郡を経て江原特別自治道春川市の春川駅へ至る京春線などもある。平沢港を利用する船舶の割合も高いが、それはソウル市をはじめとする隣接地域が輸出入などの貿易の門戸として重要な役割を担っているためである。
京畿道は、長い間首都として栄えた歴史を持っているため、遺跡地が多く残っている。王陵として九里市の東丘陵、南楊州市の光陵と洪陵、裕陵などがあり、城郭としては世界遺産に登録された水原市の華城や南漢山城、幸州山城、江華山城などがある。龍仁市の韓国民俗村では民俗文化を、坡州市の板門店では韓国の分断の悲しみが実感できる。
水原・京畿道文化の殿堂や龍仁・京畿道国楽堂では多様な公演が行われており、龍仁・京畿道博物館、白南準アートセンター、安山市の京畿道美術館、広州市の陶磁博物館などは、道で設立・運営している施設である。その他にも長興アートパーク、 坡州市のヘイリ出版芸術団地、利川市の陶磁器エキスポなどが有名である。
水原ワールドカップ競技場では2002年日韓ワールドカップの試合が行われた。京畿道を本拠地にするプロサッカークラブは、Kリーグクラシックには水原三星ブルーウィングスと城南FC、またKリーグチャレンジは10クラブ中5クラブが京畿道を本拠地としている。
バレーボールのVリーグには、男子は水原韓国電力ビクストームと安山OK金融グループ・ウッメンがあり、女子は水原現代建設ヒルステート・韓国道路公社ハイパス・IBK企業銀行アルトスが所在。
バスケットボールは男子の韓国バスケットボールリーグ(KBL)は安養KGC人参公社と高陽オリオンズが、女子の韓国女子バスケットボールリーグ(WKBL)は新韓銀行S・バード、三星生命ブルーミンクス、KDB生命ウィーナス、富川ハナ外換銀行の4チームが所在する。
また、果川市にソウル競馬場、光明市に光明ドーム競輪場、河南市に競艇の渼沙里漕艇競技場が所在する。
京畿道には有名なテーマパークとリゾートが多くある。来場者数ベース世界10大テーマパークに選ばれたエバーランドが龍仁市に位置しており、高陽市には韓流コンテンツのテーマパーク、韓流ウッドが形成中である。国立現代美術館と動物園などがある果川・ソウル大公園、龍仁・韓国民俗村なども家族連れの観光客が多く訪れる施設である。その他にも、京畿道にはソウルの人口を狙って、有名スキー場とゴルフリゾートが多数立地しており、利川市・温泉も大変有名である。
京畿道には古くから利川市の米、楊平郡の韓国牛、水原市のカルビや宮中料理、西海岸の新鮮な海鮮料理などが広く知られている。
京畿道の祭りは2004年ベース計49個である。
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