Ω, ω(オメガ、古代ギリシア語: ὦ オー、ギリシア語: ωμέγα オメガ, 英: omega)は、ギリシア文字の第24番目(最後)の文字。ギリシア数字の数価は800。
キリル文字のѠ(現在は使われていない)はこの文字を起源とする。また、「⍜」(Οの下に横棒)という書体もよく使われる。
起源
この文字はフェニキア文字には由来せず、長く広い円唇後舌半広母音/ɔː/を表すために考案された。古い時代にはこの音は短母音とおなじくο(オミクロン)によって表されていたが、東イオニア地方では短い「ε」と長い「η」を区別したのにならって、後に長母音のための専用の文字を作った。文字の字形は「Ο」の変形により、地方によっては「」のように書かれた。イオニア式アルファベットは紀元前5世紀以降にギリシア世界全体の標準として使われるようになった。
古代での文字名称は単にὦ(オー)と言ったが、西暦2-3世紀に母音の長短の区別が失われると、短い「Ο」と長い「Ω」を区別するため、前者を「小さなオ」(ὂ μικρόν) すなわち「オミクロン」、後者を「大きなオ」(ὦ μέγα) すなわち「オメガ」と呼んで区別した。
文法書によってはこの文字の発音を「オーメガ」とするものもあるが、歴史的経緯を考えれば適切とはいえない。
象徴としての用法
最後の文字であることから最終・究極の意味で用いられる。
- アルファからオメガまで(最初から最後まで)
- 「私はアルファでありオメガである」は、新約聖書のヨハネの黙示録第22章13節の言葉。これはヨハネに世界終末の光景を幻視させた存在の表明である。一般的な解釈はギリシャアルファベットの最初と最後から、私は(森羅万象総ての)始まりと終わりであると言い換えれる。これは暗に私は総てを始め、終えることの出来る神であるとの表明と捉えられている。
記号としての用法
- 大文字の「Ω」は:
- 素粒子物理学でハイペロンの一つ( からなる)を表す。
- 電気抵抗の単位 「オーム」を表す。
- 数学では
- 計算複雑性理論や解析学で使われるオーダー記号の1つ(ランダウの記号参照)
- オメガ定数およびランベルトのW関数
- 計算理論ではオメガ数(停止確率とも)
- n の重複も含めた素因数の総数を与える関数を Ω(n)と表記する。
- 最小の非可算順序数
- 天文学で昇交点黄経を表す。
- 宇宙論で宇宙の密度パラメーターを表す(宇宙論パラメータを参照)。
- Ω巻き。ヘリカルスキャン VTRのテープ走行レイアウトの方式の一。↔α巻き
- 小文字の「ω」は:
- 物理学で角速度を表す。
- 数学では
- ζ に次ぐ第 2 の複素数、あるいは未知数を表すのに用いられることがある。
- 1 の虚立方根(虚数である立方根)の何れか一方を指すことがある。
- n の相異なる素因数の個数を与える関数を ω(n) と表記する。
- 自然数全体の集合の濃度。
- 天文学で、近日点引数を表す。
- 素粒子物理学で、オメガ中間子を表す。
- 国際音声記号で円唇後舌め広めの狭母音を表す「ʊ」は、大文字「Ω」の逆さに由来する。
符号位置
オームの単位記号(Ω)はこの文字に由来するが、Unicodeでは別の文字として定義されている。Unicodeのオーム記号は、既存の文字コードとの互換性のために用意されている互換文字であり、Unicode標準ではこの文字の代わりに「オメガ大文字」を使うことを推奨している。
脚注
参考文献
- W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558
関連項目
- ジーメンス#モー - かつて使われた単位。Ωを上下逆さにした「℧」を使用する。
- ラウンドオメガ - 初期キリル文字の「Ѻ, ѻ」をUnicodeではこの名前で呼んでいる。
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