シェンロンガンダム (Shenlong Gundam) は、1995年に放送されたテレビアニメ『新機動戦記ガンダムW』に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型ロボット兵器「モビルスーツ」 (MS) のひとつ。
東洋の龍の意匠をもつ格闘戦用ガンダムタイプMSで、主要人物のひとりである「張五飛(チャン・ウーフェイ)」の搭乗機。機体名の「シェンロン」は、「神龍」の中国語読み。敵組織である「OZ(オズ)」からは「ガンダム05(ゼロファイブ)」のコードネームで呼ばれる。劇中後半では、強化型の「アルトロンガンダム」へと改修される。
メカニックデザインは大河原邦男が担当。テレビ放送終了後に発表されたOVAおよび劇場用アニメ『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』では、カトキハジメの手により再デザインされたアルトロンが登場する。これに伴い、改修前のシェンロンも再デザインされた。以降、大河原デザインの機体は「テレビ版」、カトキデザインの機体は「EW版」として区別されているが、設定上は同一機あつかいとなっている。改修前の機体は、当初は「アーリータイプ」とも呼ばれていた(詳細は後述)。
本項では、外伝作品『新機動戦記ガンダムW〜ティエルの衝動〜』に登場するティエンロンガンダムの解説も併記する。
スペースコロニー内の反地球圏統一連合勢力によるテロ作戦「オペレーション・メテオ」で投入された5機のガンダムの1機。トールギスやウイングガンダムゼロを設計した元OZの技術者のひとり・老師Oが開発を手がけ、L5コロニー出身の少年・張五飛がパイロットを務める。
機体駆動システムを得意分野とする老師Oの思想を反映して、高い俊敏性で敵陣に切り込む近接戦闘を得意とする。このため5機中最大のファイティングアビリティ値を有し、中国武術の体さばきを再現可能なほどの関節可動域をもつ。武装も右腕の「ドラゴンハング」や「ビームグレイブ」といった、間合いの長い接近戦用装備でまとめられている。両肩アーマー前面にはレンズ状のファイティングサイトが設置され、戦闘中の情報収集や分析能力にも長けている。射撃武装は頭部バルカン砲のみながらも汎用性はウイングガンダムに次いで高い。
機体名の「シェンロン」は五飛自身が名付けたものだが、普段は「ナタク(哪吒)」の愛称で呼ばれている。これは本機をかばって死亡した五飛の妻・竜妹蘭(自称ナタク)の影響からである。五飛は本機に妹蘭の魂が宿っているとしていた。
劇場作品『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 特別篇 』公開時に、OVAでカトキハジメによってリファインされたEW版アルトロンガンダムから逆算して、テレビ版シェンロンをリファインした機体。大河原デザインのテレビ版に対し、この機体はカトキ本人のイニシャルを取って「Ver.Ka.」、もしくは「アーリータイプ」とも呼ばれていたが、漫画『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 敗者たちの栄光(敗栄)』で当デザインの機体が登場することなどをきっかけとして、EW版と呼称されるようになった。全体的な形状はEW版アルトロンに準拠、配色はテレビ版同様のトリコロールだが、両肩アーマー前面のファイティングサイトは排除され、肩自体も小型化されている。Vアンテナの形状も変更。また、ドラゴンハングの展開ギミックや武装も一部変更されている。
揚子江でOZ艦隊を壊滅させつつ南下し、インダス川補給基地やアフリカのヴィクトリア湖基地を襲撃する。最後はドラゴンハングを失った状態でOZの月面基地を単独襲撃し、集中攻撃を受けて鹵獲される。しかしこれは、より強い力を得ようとした五飛の計算によるものだった。
テレビ版のデザインを担当した大河原邦男は自著において、前作『機動武闘伝Gガンダム』のドラゴンガンダムが好評だったことからデザインされた旨を語っている。また、ドラゴンハングの甲のデザインはゴッドガンダムからの延長線だという。
OZ月面基地に拘束されていた5人のガンダム開発者たちが、同基地に鹵獲されたシェンロンを、同じく鹵獲されたデスサイズとともに密かに修復・強化した機体。
背部左右にスラスター内蔵の可動翼ランダムバインダー、両すねは前面が鉤爪のような意匠になるとともにサブスラスターが追加され、宇宙空間での機動性が高められている。ファイティングサイトのレンズ部分も、宇宙用に適正化されている。塗装は、シェンロンの白と青基調から、白と緑基調に変更された。
OVAおよび劇場版『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』用にカトキハジメがリファインした機体。最大の特徴はドラゴンハングの形状やギミックの変更。機体色はテレビ版アルトロンよりも彩度を落とした地味目のカラーに変更。ビームキャノンやランダムバインダー、シールド、脛部スラスターはすべて省略され、シンプルなデザインにまとめられている。これはプラモデル化(後述)を考え、デザインされたためである。テレビシリーズとデザインが異なるが、設定上は同一の機体である。OVA公開当時に発売されたプラモデルなどの商標名や関連ゲームにおける名称は、テレビ版と区別できるように「アルトロンガンダムカスタム」もしくは「ガンダムナタク」と呼称されていたが、リデザインされた同一機ではなく改良機と誤解を招くことから、徐々に「アルトロンガンダム(EW版)」という名称表記へと移行していった。『敗栄』では、映像版では省略されたランダムバインダーとビームキャノンが同時に装備しているバックパック「フーティエ(胡蝶)」として復活した。
この機体のプラモデルでは「ガンダムナタク」というネーミングをされているが、設定資料によってはほかのガンダムと同様「アルトロンガンダムカスタム」とも呼ばれる。劇中ではそれまでと同様、ナタクと呼称されている。また1/100スケールにてプラモデル化の際シェンロンガンダムより流用されたパーツが多く、EW1/100シリーズでは唯一完全新規ではないため設定および同シリーズ他ラインナップと比較し太めのプロポーションとなっている。
なお、ゲーム『SDガンダム GGENERATION』シリーズでは、ほかの機体がエンドレスワルツ版の表記に改められた現在もなお、「ガンダムナタク」の名称でほぼ統一されている。一方、『スーパーロボット大戦』シリーズでは、『第2次スーパーロボット大戦α』までは「アルトロンガンダムカスタム/アルトロンカスタム」か「ガンダムナタク」でまちまちだったが、『第3次スーパーロボット大戦α』以降は「アルトロンガンダム」でほぼ統一されている。
大河原邦男はドラゴンハングが好評であったことから二つに増やした一方で、そのギミックとの兼ね合いのためにシールドの処理に不満が残る形になったとも語っている。
『新機動戦記ガンダムW〜ティエルの衝動〜』に登場する機体。太陽光が直撃する戦場でも戦える様開発された試験機でもあり、全身が光熱反射材で構成されている。ゼロシステムが搭載されており、これによってMDの遠隔操作が可能となっている。名称のティエンロンは、「天龍」を意味する。
ロームフェラ財団によって保管されていたところを、マリーメイア軍所属の少女工作員クルング・ポンラマーイによって奪取された。追撃してきたガンダムデスサイズギルティとガンダムサンドレオンの2機を撃退し、戦士の墓へと突き落とした。その後、ゼロシステムとMDシステムの併用によって、探査用MSであるキャプリコーンを遠隔操作する。
しかし、のちにパイロットのクルングが本性を現し、ティエルの操縦するウイングガンダムセラフィムに攻撃を仕掛けた際、ゼロシステムを暴走させたウイングガンダムセラフィムによってキャプリコーンともども返り討ちにされ、パイロットのクルングも死亡する。
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