![SLやまぐち号 SLやまぐち号](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f7/C571_SL_Yamaguchi_20170909.jpg/400px-C571_SL_Yamaguchi_20170909.jpg)
SLやまぐち号(SLやまぐちごう)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)が山口線の新山口駅 - 津和野駅間で運行している臨時快速列車である。
日本国有鉄道(国鉄)→ JRグループの蒸気機関車 (SL) の牽引により運行される動態保存列車の緒ともいえる列車である。国鉄でのSLによる定期旅客列車の運行が終了した1975年(昭和50年)12月14日から3年8か月後の1979年(昭和54年)8月1日に運行を開始した。
運行開始当初の時刻表では列車名は単に「やまぐち」とのみ表記されていたが、2001年(平成13年)以降の時刻表では、「SL」および「号」まで列車名に含めた「SLやまぐち号」の表記となった。
SL1両+客車5両(重連運転の場合もある。詳細は後述)の編成で、3月中旬から11月下旬までの週末(土曜・日曜・祝日)および夏休み・ゴールデンウイークなどの繁忙期に、1日1往復が運行される。
このほか、正月三が日に津和野町の太皷谷稲成神社への参詣の便を図った初詣列車「SL津和野稲成号」として運行される。かつては、「SL津和野稲成初詣号」や「SLやまぐち初詣号」などと、年によって列車名が異なっていたが、2006年(平成18年)から現在の名称となった。年によっては、クリスマスに「SLクリスマス号」といった列車名で運行されることもある。
また、SLが故障や検査、修繕などにより使用できずディーゼル機関車 (DL) で牽引することがある。この場合には「DLやまぐち号」の愛称を使用する。
新山口駅 - 湯田温泉駅 - 山口駅 - (仁保駅) - 篠目駅 - 長門峡駅 - (地福駅) - 鍋倉駅 - 徳佐駅 - 津和野駅
運行開始から、客車の牽引には梅小路運転区所属のC57 1が使用される。同機が故障や検査などで使用できないときは、予備機であるD51 200が使用される。また、この2両が重連で牽引することもある。なお、D51 200は本線復帰のために修復されており、2017年(平成29年)に本列車の予備機として投入された。
SL現役時代、山口線ではC57形は使用されておらず、C58形やD51形、D60形などが使用されていた。山口線は勾配が続き、トンネルも多いため、煙突に集煙装置が取り付けられていたが、C57 1も入線に当たって、現役時代は取り付けられていなかった集煙装置が取り付けられた。これにより、同機は大きく形態を崩すこととなったが、乗務員の労働環境改善に配慮するため、致し方ないものとされた。
しかし、先述の様々な問題面を解決し、2003年(平成15年)ごろより定期的に集煙装置を取り外しての運行が度々行なわれるようになった。現在では現場側から使用しない方向性もあり、同装置は梅小路運転区に返却され、2012年(平成24年)からは集煙装置を外した状態での通年運行が定着している。
「DLやまぐち号」としてDLでの牽引となるときは、下関総合車両所運用検修センター所属のDD51形(現在はDD51 1043)、またはDE10形の重連が使用される。また突発的なSL不調時および故障時にも、DD51形が補助機関車(補機)としてSLの次位に連結されたり、代理で牽引したりすることがある。
1980年(昭和55年)から1984年(昭和59年)までの間は予備機としてC58 1が使用され、C57 1との重連運転も実施された。C58 1はボイラーを傷めたため、1984年(昭和59年)に梅小路蒸気機関車館(現・京都鉄道博物館)へ戻され、お召し仕様で静態保存されている。1987年(昭和62年)にC56 160が本列車の予備機として投入された。
C57 1が故障や検査などで使用できないときはC56 160が本務機となっていたが、C56 160単機では勾配の多い山口線での牽引は客車2両が限界であるため、前述のDD51形を補機に従えた重連で運転された。2005年(平成17年)秋にC57 1が故障した際にはC56 160の手配が付かず、DD51形の単機牽引で「DLやまぐち号」として運転された。また、C57 1が検査中であった2010年(平成22年)5月4・5日もC56 160の不調によりDD51形の単機牽引となった。なお、C56 160は2018年(平成30年)5月5日に実施されたD51 200との重連運転をもって本列車の牽引を終了した。また、翌6日に津和野 → 新山口間で運行された「ありがとうC56号」をもって山口線での運用を終了した。
2017年(平成29年)9月2日の運行分から、専用客車である35系5両編成が使用されている。SL全盛期の雰囲気を再現するために、1920年代から30年代にかけて国鉄で使用されたマイテ49形・オハ35形・オハ31形を再現するべく新たに製造された車両で、SLの音や煙を体感できるように開放式展望デッキや開閉窓、SLを体験・学べるフリースペースを設置し、車椅子といったバリアフリー対応、ベビーカー置き場、温水洗浄機能付きトイレなどにより快適性を向上させている。
編成はマイテ49風客車は2+1列のグリーン車、それ以外の客車は普通車指定席となり、グリーン車1両・普通車指定席4両で組成されることになる。蒸気機関車牽引列車(SL列車)におけるグリーン車の設定は、JR東日本が定期運行を行っている「SLばんえつ物語」に続き、2例目となる。
運行開始当初は無改造の12系客車5両編成が使用されていたが、1986年(昭和61年)から1987年(昭和62年)にかけて、外装がぶどう色2号の地に白帯に改められた。1988年(昭和63年)にオハ12 247とスハフ12 18を除く5両が本列車用に改造され、同年7月16日付で竣工。小郡運転区(現・下関総合車両所新山口支所)所属の12系700番台となり、本列車としては同月24日から2017年(平成29年)8月27日まで運用された。
幡生車両所(現・下関総合車両所本所)で旧型客車をイメージして改造されたもので、「レトロ客車」と称し、1両ずつ内装を各時代の客車を模したデザインとしていた。各車両とも窓をユニット窓から一段上昇窓に改め、窓自体も小型化されていたほか、座席を1列減らし(11列・定員88名 → 10列・定員80名)、座席間隔を1,580 mmから1,755 - 1,760 mmへと拡大することにより生じた空間に、固定式のテーブルが設置されていた。また、座席の形状も1両ごとに異なっていた。改造当初は各客車のイメージに合わせて、赤茶色、緑、ぶどう色2号の3種類の塗色が使用されたが、2005年(平成17年)のリニューアルでぶどう色2号の地に白帯の塗装に統一された。また昭和風客車以外の4両は屋根にカバーを取り付け、各時代の客車の屋根に似せた形状としたが、後述のリニューアルによりカバーはすべて撤去された。全車座席指定席で、2009年(平成21年)8月15日までは夏期およびC56 160との重連運転時に、旧型展望客車マイテ49 2を津和野方に増結し、6両編成で運行されたこともあった。この場合、同車はフリースペースとされ、本列車の指定席券を持っていれば誰でも乗車可能となっていた。また、明治風客車のディーゼル発電機故障時および不調時には、予備電源車(当初はスハフ12 18。のちにはスハフ12 36)が津和野方に増結された。
先述の35系客車投入により、2017年(平成29年)8月27日の1往復の運行を最後に本列車としての運用を終了する予定であったが、運行当日の津和野駅停車中に明治風客車のディーゼル発電機の故障が見つかり、修理の目処がたたず上り津和野発新山口行き列車は運休。そのため、本列車としての最終運用は下り新山口発津和野行き列車のみとなった。その後短期間の内にスハフ12 36のディーゼル発電機を転用させ、同年9月2日に津和野 → 新山口間で運行された「SLありがとうレトロ客車号」をもって運用を終了した。レトロ客車5両は、同月7日に下関総合車両所本所へ廃車回送され、翌10月27日付でスハフ12 36とともに廃車となった。これにより、オハフ13形は廃形式となった。しばらくは同所に留置されていたが、のちには下関総合車両所運用検修センターへ移動された。大井川鐵道が、JR西日本からSLやまぐち号に使用されていたレトロ客車を譲り受けたことを2018年(平成30年)2月26日に発表した。同社の「かわね路号」で使用しているオハ35形やスハフ42形などの旧型客車の負荷分散が目的であるとしており、「今後の整備状況によっては(旧型客車を)休車、廃車とする可能性があります」と説明している。これを受け、同月下旬に下関総合車両所運用検修センターから新金谷車両区まで輸送され、同28日に展望車風客車と欧風客車を、翌3月1日に昭和風客車と明治風客車、大正風客車を線路上に再度移す作業が行われた。
『鉄道ファン』2018年12月号における車両区長のインタビューによると、2018年(平成30年)9月現在は大井川本線用に可能な範囲での整備中であり運行時期は未定である。しかし、心のない者によって方向幕等の部品が窃盗される被害に遭ってしまい、遅々として整備が進まずにいる。
上記の車両は本列車のほか、他路線の臨時列車に使用されたこともあった。
ヘッドマークは木彫り彫刻式のもので、丸型の黄色地に、山口県周南市八代地区で越冬のために飛来する鳥で、同県県鳥にも選定されているナベヅルを象ったものである。また、「やまぐち」と下の方に横書きで書いてある。運行開始以来、記念運転時の特製ヘッドマーク使用例を除き、変更されていなかったが、2019年(平成31年)3月末の運行からオリジナルを踏襲したデザインで新しいものに置き換えられた。
このほか、次のヘッドマークが使用された(下記の特別運用時については省略)。
1987年(昭和62年)7月4日にテールマークの掲出を開始した。国宝である瑠璃光寺(山口市)の五重塔が描かれており、斜め右下がりで、「やまぐち」と文字が書かれているものを使用する。
過去に本物の旧型客車を使用して運行されたことが何度かあった。最初は山陰本線で現役であった車両を使用して運行したもので、のちにはJR西日本が所有する保存車両での運行であった。旧型客車使用時の編成内容の一例は以下のとおり。小郡方が1号車。
そのほか、下記のような延長運転の実施や特別編成が組まれたことがある。
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