![ゲエズ文字 ゲエズ文字](https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1a/Ge%27ez.svg/400px-Ge%27ez.svg.png)
ゲエズ文字(ゲエズもじ、アムハラ語: ፊደል fidäl)は、かつてゲエズ語を表記するために生み出され、現在はアムハラ語、ティグリニャ語、ティグレ語など、エチオピアやエリトリアの諸言語の表記に用いられる文字である。ゲーズ文字、アムハラ文字、エチオピア文字とも呼ばれる。サブサハラアフリカでは極めて古い歴史を持つ。
アブジャドである南アラビア文字から派生したアブギダであり、左から右へと書かれる。ひとつの文字がひとつの音節を表すことが多い。
ゲエズ文字の基本的な子音は26文字からなる。文字の順序はほかのセム系の文字とは大きく異なり、以下のように並ぶ。
これと同じではないがよく似た配列順は古代の南アラビア文字とウガリット文字にも例が見られ、とくに後者は後期青銅器時代の紀元前1200年ごろのものであって、古い歴史をもつ順序であることがわかる。ただし、特定の宗教的な文脈では、ヘブライ文字などと同じ順序に並べられることもある。
アムハラ語を表すゲエズ文字は、ゲエズ語にない破擦音・摩擦音などを表すために7文字が追加されて33文字になっている。追加文字は、元のゲエズ文字に横棒などを追加することによって作られ(s→š, t→č, n→ñ, k→x, z→ž, d→ğ, ṭ→č̣)、配列上は元の文字の直後に置かれる。
基本的な子音文字は母音の ä が後続するものと見なされる。それ以外の母音が後続する場合は、文字の上・下・右などに記号を追加することによって文字を変形する。実際には記号と文字が融合して新しい字のようになってしまっている場合もある。とくに ə が続く場合にどのように文字が変形されるかは暗記するしかない。母音は次の7つがある(例として、子音がbの場合を示す)。
唇音化した子音(kʷ gʷ qʷ ḫʷ)は、それぞれ唇音化していない子音に唇音化の記号を加える。その上にさらに母音記号が加わることもあるが、唇音化子音には u o は後続しない。
ゲエズ語の表記に使われる文字の総数は、26の子音に7つの母音が後続し、4つの唇音化子音に5つの母音が後続するため、26×7 + 4×5 = 202文字になる。
子音のうしろに母音が続かない場合は、ə が続く場合と同じ表記になる。
ゲエズ語には重子音があるが、表記上は重子音とそうでない子音は区別されない。
ゲエズ文字にはギリシアのイオニア式数字表記に由来する数字が存在する。ただし、現代では通常アラビア数字を使用する。
伝統的に、単語の後ろにはコロンに似た記号を加える。現代ではこの記号はスペースに置きかえられつつある。コロンに1本の横棒を加えたものはコンマに、2本の横棒を加えたものはセミコロンに、コロンを2つ重ねたものはピリオドに相当する。7つの点で段落の終わりを示す。
ゲエズ文字は、南アラビア文字から発達したことが明らかである。アクスムの地には紀元前500年ごろのサバ語系の南アラビア文字で書かれた碑文が残っている。
ゲエズ語はおそくともアクスム王国時代の4世紀には文字に書かれた。サバ語にない p などの文字が新たに追加された。最初は南アラビア文字と同様、子音のみを表していたが、350年ごろから母音記号がつけられるようになった。ゲエズ語を母語としない者が学習する必要が増加したのが原因かもしれないという。ゲエズ文字の母音記号のつけ方はインドの文字とよく似ているが、両者に歴史的な関係があるかどうかはわかっていない。
アムハラ語は、14世紀以来この文字で書かれている。アムハラ語にはゲエズ語にない摩擦音や破擦音があるが、これらは破裂音の字の上に横棒を加えることで表される。また ñ(/ɲ/)も、n の字に横棒を加えることで表される。
文字名称が存在しないのはアムハラ語用の追加文字である。
Unicode には 次の領域に以下の文字が収録されている。
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