優駿牝馬(ゆうしゅんひんば)は、日本中央競馬会(JRA)が東京競馬場で施行する中央競馬の重賞競走(GI)である。1965年から(オークス)の副称が付けられており、競馬番組表での名称は「優駿牝馬(オークス)」、回次を含める表記では「優駿牝馬(第○回オークス)」と表記している。
「オーク(Oak)」は、樫を意味する英語。「ダービーステークス」創設者の第12代ダービー卿エドワード・スミス・スタンレーは樫の森が茂る「オークス」と呼ばれる土地を所有しており、1779年にエリザベス・ハミルトンと結婚した際、記念に競馬を開催することを発案。その中に夫人の希望を入れて3歳牝馬のレースを行い、これが「オークスステークス」と名づけられたのが由来とされている。日本では本競走の優勝馬を「樫の女王」という通称で呼ぶこともある。
正賞は内閣総理大臣賞、日本馬主協会連合会会長賞。
概要
1938年にイギリスのオークスステークスを範として、4歳(現3歳)牝馬限定の「阪神優駿牝馬(はんしんゆうしゅんひんば)」を阪神競馬場(旧鳴尾競馬場)に創設。横浜農林省賞典四歳呼馬(現: 皐月賞)・東京優駿(日本ダービー)・京都農林省賞典四歳呼馬(現: 菊花賞)・中山四歳牝馬特別(現: 桜花賞)とともに日本のクラシック競走のひとつとされる。桜花賞は最もスピードのある繁殖牝馬の検定競走とされたのに対し、本競走はスピードとスタミナを兼ね備えた繁殖牝馬を選定するためのレースとされている。
距離は創設当初芝2700mだったが、1940年から1942年まで芝2450mで施行した後、1943年から芝2400mに変更。施行場も1946年から東京競馬場に変更され、この際に名称を「優駿牝馬」に改称。1965年から(オークス)の副称が付けられ、現在に至る。施行時期は1952年まで秋季だったが、1953年から春季に変更された。
1984年よりグレード制が施行され、GIに格付け。1995年から地方競馬所属馬が、2003年からは外国産馬がそれぞれ出走可能になり、2010年からは外国馬も出走可能な国際競走となった。
2018年から2020年まで、本競走の1 - 3着馬には当該年に行われるヴェルメイユ賞への優先出走権が与えられていた。同年よりヴィクトリアマイル・安田記念とともにデスティナシオンフランスの名称で提携していたが、2021年より対象競走から外された。
競走条件
以下の内容は、2024年現在のもの。
出走資格: サラ系3歳牝馬(出走可能頭数 :最大18頭)
- JRA所属馬
- 地方競馬所属馬(後述)
- 外国調教馬(優先出走)
負担重量: 馬齢(55kg)
未勝利馬・未出走馬(収得賞金が0の馬)には出走権がないものの、未勝利馬・未出走馬でも出走できるフローラステークス・スイートピーステークスで収得賞金を加算し、優先出走権を得れば出走できる。2017年までは、フローラステークス3着・スイートピーステークス2着でも優先出走権を得られたものの、これらの着順では収得賞金を得られないため、未勝利馬・未出走馬がこれらの着順となった場合は出走資格を得られなかった。
出馬投票を行った馬のうち優先出走権を持つ馬から優先して割り当て、その他の馬は通算収得賞金の総計が多い順に出走できる。なお、出馬投票の結果同順位の馬が多数おり出走可能頭数を超過した場合は、抽選で出走馬を決める。
優先出走権
出馬投票を行った外国馬は、優先出走できる。
JRA所属馬・地方競馬所属馬は以下の競走で所定の成績を収めた馬に、優先出走権が付与される。
地方競馬所属馬は上記のほか、NHKマイルカップの2着以内馬、およびJRAで施行する芝の3歳重賞競走優勝馬にも出走資格が与えられる。
賞金
2024年の1着賞金は1億5000万円で、以下2着6000万円、3着3800万円、4着2300万円、5着1500万円。
歴史
年表
- 1938年 - 4歳牝馬限定の競走「阪神優駿牝馬」を創設。
- 1939年 - 距離を2450メートルに短縮。1位入線のヒサヨシが競走後、薬物使用が判明し失格となり、2位入線のホシホマレが繰り上がりで優勝(ヒサヨシ事件)。
- 1943年 - 施行場を京都競馬場に変更、距離を2400メートルに短縮。
- 1944年・1945年 - 太平洋戦争の影響で中止。
- 1946年 - 施行場を東京競馬場に変更、名称も「優駿牝馬」に変更。
- 1965年 - これ以降「オークス」の副称が付く。
- 1984年 - グレード制導入、GIに格付け。
- 1995年 - 指定交流競走となり、地方所属馬も出走が可能になる。
- 2001年 - 馬齢表示を国際基準へ変更したことに伴い、出走条件を「3歳牝馬」に変更。
- 2003年 - 外国産馬が最大2頭まで出走可能となる。
- 2007年 - 格付表記をJpnIに変更。
- 2010年
- 国際競走に指定され、外国調教馬・外国産馬が合わせて最大9頭まで出走可能となる。
- 格付表記をGI(国際格付)に変更。
- アパパネとサンテミリオンがJRA主催のGI・JpnIでは初の1着同着となった。
- 2020年 - 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、「無観客競馬」として実施。
- 2024年 - 負担重量を馬齢表記に変更。
歴代優勝馬
優勝馬の馬齢は、2000年以前も現行表記に揃えている。
競馬場について、第5回までの「阪神」は鳴尾競馬場を表す。
競走名は第6回まで「阪神優駿牝馬」、第7回以降は「優駿牝馬」。
優駿牝馬の記録
- レースレコード 2:22.8(第80回優勝馬ラヴズオンリーユー)
- 優勝タイム最遅記録 - 2:46 2/5(第7回優勝馬ミツマサ)
- 最多優勝騎手 - 5勝
- 嶋田功(第33回・第34回・第35回・第37回・第42回)
- 最多優勝調教師 - 5勝
- 尾形藤吉(第1回・第5回・第6回・第15回・第30回)
- 稲葉幸夫(第4回・第33回・第34回・第37回・第42回)
- 同一騎手の最多連覇記録 - 3連覇
- 最多優勝馬主 - 3勝
- (有)社台レースホース(第44回・第78回・第83回)、(有)キャロットファーム(第66回・第69回・第77回)、(有)サンデーレーシング(第70回・第73回・第84回)
- 最多勝利種牡馬 - 4勝
- ディープインパクト(第73回・第76回・第77回・第80回)
- 最年少勝利騎手 - 熊沢重文(第49回・20歳3ヶ月)
- 最年長勝利騎手 - 本田優(第67回・47歳7ヶ月)
- 親子制覇
- クリフジ - ヤマイチ
- ダイナカール - エアグルーヴ
- 騎手・調教師の両方で優勝
- 稲葉幸夫(第4回(調騎兼業)、第33回・第34回・第37回・第42回)、高橋英夫(第10回、第44回)、清田十一(第20回、第50回)
脚注・出典
参考文献
- 「優駿牝馬(オークス)」『中央競馬全重賞成績集【GI編】』日本中央競馬会、1996年、407-505頁。
注釈
出典
各回競走結果の出典
- 『中央競馬全重賞成績集【GI編】』 第1回 - 第56回
- JRA年度別全成績
- (2024年)“第2回 東京競馬 第10日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2024年5月20日閲覧。(索引番号: 12119)
- (2023年)“第2回 東京競馬 第10日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2023年5月23日閲覧。(索引番号: 11119)
- (2022年)“第2回 東京競馬 第10日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2022年5月23日閲覧。(索引番号: 11119)
- (2021年)“第2回 東京競馬 第10日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2021年5月24日閲覧。(索引番号: 11119)
- (2020年)“第2回 東京競馬 第10日” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6. 2020年5月25日閲覧。(索引番号: 11119)
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- (2002年)“第4回 東京競馬成績集計表” (PDF). 日本中央競馬会. pp. 1412-1413. 2016年5月12日閲覧。(索引番号: 13023)
- 『優駿』1990年5月号(日本中央競馬会)
- netkeiba.com(最終閲覧日 :2024年5月20日)
- 1990年、1991年、1992年、1993年、1994年、1995年、1996年、1997年、1998年、1999年、2000年、2001年、2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2012年、2013年、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年、2019年、2020年、2021年、2022年、2023年、2024年
- JBISサーチ(最終閲覧日 :2017年5月22日)
関連項目
- 各国の「オークス」
- 中央競馬クラシック三冠
- 中央競馬クラシック競走優勝馬一覧
- 阪神四歳牝馬競走
外部リンク
- データ分析:優駿牝馬(オークス) 今週の注目レース - 日本中央競馬会
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